A Woman A Man Walked By
PJ Harvey & John Parish / 2009 / CD
現在、新譜がリリースされると聞いて、僕にとってもっとも期待値が高い女性アーティストがこのPJハーヴィー。これまでの作品のどれひとつとっても、それほど聴き込んでいないくせに、なぜか新作が出ると聞くと、いつも期待で胸がわくわくする。それは彼女のサウンドのコアとなるのが基本的に荒削りなギター・サウンドだからだと思う。そのボーカルが大好きなことはもちろん、サウンド面でも理想的なオルタナティヴ・ギター・サウンドが聴ける──いや、聴けるかもしれない──、そういう期待値があるので、僕はいつでも彼女の新作を心から楽しみに待っている。
前作の 『White Choak』 は、そんな僕の期待をものの見事に裏切ってくれた作品だった。これは彼女が独学で学んだという、きわめて初歩的なピアノをベースにした、とても静かな作品で、全編にわたってギターもドラムもほとんど鳴っていないという、これまでの作品からするとかなりの異色作だった。いまになって聴き直してみると決して悪い作品ではないのだけれど、うす暗闇のなかを漂うようなその抑えたトーンが当時の僕の気分にはまるでそぐわなくて、あまり聴かずに終わってしまった。
それにつづく今回の最新作は、ジョン・パリッシュ――どういう経歴の人か、僕はまるで知らない――との13年ぶり、2度目のコラボレーション・アルバム。前作同様、音作りは全部パリッシュさんに任せて、PJ自身は作詞とボーカルだけに専念している。
前作におけるパリッシュ氏の音作りはルーツ・ミュージック寄りで、PJハーヴィーのソロにはない、そのダウン・トゥ・アースな味わいが新鮮だったけれど、今回はアコギを多用している点は同じながら、雰囲気的にはもっと普通で、ちょっとおとなしめのPJハーヴィーのソロという感じになっている。前作は「ジョン・パリッシュ&ポーリー・ジーン・ハーヴィー」という名義だったのが、今回は「PJハーヴィー&ジョン・パリッシュ」と名前が逆転しているのも、その辺の変化を表しているのかもしれない。知名度からするとこちらのほうが普通な気がする。
まあ、正直なところ、僕としてはもっとガリガリした音や重い音を聴かせて欲しいところなのだけれど、ソロじゃないんだから、その辺はないものねだりというもの。これはこれで悪くないので、しっかりと聴き込んで次のアルバムを楽しみに待ちたいと思う。
(Apr 22, 2009)