絶対絶命
RADWIMPS / 2011 / CD
ラッドウィンプス、待望の6枚目のアルバム。
このアルバムに関してはリリース前から、いつにもまして期待値が高かった。
なんたって先行シングルの 『DADA』 と 『狭心症』 がものすごくアグレッシブなナンバーだったし、そこへきてタイトルが 『絶対絶命』 だってんだから。で、先行シングルのうち、もっとも陽性の 『マニフェスト』 は未収録。さらにはラストナンバーのタイトルは 『救世主』 とくる。こりゃどんだけ真っ向勝負を挑んでくるんだと──きっとラッドウィンプス史上、もっともシリアスな作品に仕上がっているに違いないと──、勝手に決めつけて盛りあがってしまっていた。
でも、いざ手元に届けられたこの作品は、僕が思っていたような極端なものではなかった。
いや、シリアスな部分は多々あるけれど──というか 『狭心症』 一曲でも世の中の平均値を大きく上回ってしまう気がするけれど──、アルバム全体としてみた印象では、これまでの彼らの作風からそれほど大きく逸脱するようなものではなかった。
音楽的な面でいえば、全編ラップのシニカルなヒップホップ・ナンバー 『G行為』 に意表をつかれたくらいで(この曲はスチャダラパーみたいだ)、あとはアッパーなのも、スローなのも、これまで通りのラッドウィンプス(だと僕は思った)。なもんで、少なからず拍子抜けしてしまった感があった。
まあ、変わってないといっても、それは全体的な印象の話であって、ディテールに目を向ければ、確実に変化はある。『おかずのごはん』 でピークを極めた野田くんの恋愛至上主義は前作を経てさらに影を潜めているし──といいつつ、ラスト・ナンバーの 『救世主』 はそうした路線の完成形とでもいうべき曲だったりするんだけれど──、ジャケットが全曲の歌詞カードを重ねあわせたものであることからして、言葉に対する並々ならぬ思い入れの深さを感じさせる。それでいてサウンド・デザインはおそらくバンド史上もっともラウドだ。要するに言葉の面でも、サウンドの面でもきっちりと成長の跡がうかがえる。一個のロック・アルバムとしてみれば、これはどう考えたって平均値以上の出来。
なもんで、これがほかのバンドだったらば確実に「あぁ、素晴らしい作品だ」って絶賛して済むところなのに。なまじ思い入れが深すぎるために──そして過去の作品があまりに好きすぎるために──、なんだか素直に称賛しきれないという。ちょっと申し訳ない。
まあ、とはいえ、この一ヶ月間、僕はなんだかんだいいつつも、このアルバムを飽きずに聴きつづけているわけで。今日だって仕事をしている僕の頭の中では 『億万笑者』 や 『救世主』 が絶えず鳴り響いていた。震災の傷あとが癒えないいまだからこそ、ラスト・ナンバーでの「僕を救ってくれないか」というフレーズは、なおさら強く心を打つ。
そう、そしてなによりこのアルバムには、 『狭心症』 という史上最強の一曲が収められている。この一曲だけでも、アルバム一枚分の価値があると僕は思う。
(Apr 17, 2011)