Dye It Blonde
Smith Westerns / CD / 2011
シカゴ発の3人組バンド、スミス・ウエスタンズのセカンド・アルバム。
ぜんぜん知らないバンドだったけれど、Pitchfork で高評価を受けているのを見て、ネットで試聴してみたらよさそうだったので買ってみた。
そしたら、いざきちんと聴いてみて、びっくり。ネットで聴いたときには通信環境が悪いだけだと思っていたけれど、CDで聴いても、なんだかとても、もこもこしている。なんだ、この古めかしいこもった音は? とても21世紀のバンドに聞こえないぞ。メンバーは全員二十歳そこそこだという噂なのに、なんでこういう音が出てくるんだろう?
レニー・クラヴィッツやホワイト・ストライプス、リトル・バーリーなど、昔っぽい音を鳴らすアーティストはいままでもいたけれど、そういう人たちの場合、ヴィテージ・ロックやブルースへの憧憬から出発している点で、音の出自があきらかだった。
でもこの子たちの場合、根本的にそれとは方向性が違う。スミス・ウエスタンズの音はもっとチープで、それでいてキャッチーだ。
要するにブルース色というか、黒人音楽色がまったくないところが、先にあげた先達たちとは決定的に違っているのだと思う。60年代末から70年代初頭にかけての、ポップ・ミュージックとしてのロックの空気感が見事に再現されている。なんだこりゃ?……な、それでいて魅惑的な楽曲群。
あとで Wikipedia を調べてみたら、彼らのページのジャンルの欄には「グラム・ロック」と書いてあった(いまはもう違っているけれど、そのときは先頭に書いてあった)。なんでいまさらグラム……と思ったけれど、でもなるほど。2曲目のアウトロの感触とか、ラスト・ナンバーのギターのリフのわかりやすさとか、たしかにTレックスみたいだ。
とはいえ、ネットでちらりと見かけたバンドのたたずまいには、そんなグラム・ロックならではのけばけばしさは微塵もなかった。音の感触だけはグラムに通じるものがあるかもしれないけれど、あとはいまどきの平凡で繊細なインディー・ロック・バンドという感じ。そこんところのギャップがおもしろい。
まあでも、この音はグラムというよりは、どちらかというとビーチ・ボーイズやフィル・スペクターというほうが近い気がする。切ないメロディーがやたらキャッチーだし、白人ロックならではのポップ・センスが見事に凝縮した感じがする。今年前半でもっとも印象的な一枚だった。
(May 29, 2011)