The Whole Love
Wilco / CD / 2011
ウィルコの通算八枚目となるスタジオ・アルバム。僕が彼らの音楽を好きになってからアルバムが出るのはこれが初めて。
このアルバムは始まりと終わりが振るっている。
まずは一曲目、『Art of Almost』のイントロを聴いて、お~っと思う。ウィルコらしからぬ、まるでレディオヘッドかって斬新なリズム・パターンを聴かせてくれるからだ。
でも、おおっ、これはカッコいい──と思わせたそのフレーズがそのままつづかないところがおかしい。そのイントロのビートは歌が始まらないうちに、交響曲的な大音量の和音のなかへとフェードアウトしていってしまい、ようやく歌が入ってくるところでは、リズム隊は休憩に入ってしまっているんだった。で、歌のメロディはいかにもって感じのメローなウィルコ節。わはは、なんだこりゃ。
それほど間をおかず、再びリズム隊は戻ってくるんだけれど、いったんフェードアウトしたもんだから、そのときにはイントロで感じさせた斬新さはすでに感じられない。いたってまったりとした定番のウィルコ・ナンバーって感じになっている。なんかこの、「新しいことしてみようと思ったんだけれど、なんとなく自分たちらしくない気がしたので、やめておきました」みたいな感じがやたらとおもしろかった。
もう一曲、すごいなと思ったのが、ラスト・ナンバーの『One Sunday Morning』。これ、曲調はいたって穏やかな、それこそよくあるミディアム・テンポの小品って感じの曲なんだけれど、驚いたことにトータル・タイムが12分もある。それも特別に長いギター・ソロがフィーチャーされていたりはしない。3分くらいで終わってもおかしくない淡々としたシンプルな歌とメロディが、延々と12分間もつづくのだった。それでいてこの曲、不思議なことにそれほどの長さを感じさせない。気持ちよく聴いていると、気がつけば知らないうちに12分が過ぎている。そんな感じがするところがすごい。地味ながらすごいなと思う。
そのほかのナンバーでは、今回はメロディーがかわいい曲がけっこう多い。多いというか、だらけというか。おかげで派手さはないけれど、全体にとてもポップでキュートな仕上がりのアルバムになっている。一見むさくるしいルックスをしたジェフ・トゥイーディらが、こういうかわいい作品を作っているのがなんとも微笑ましい。
(Jan 29, 2012)