firefly
BUMP OF CHICKEN / CD Single / 2012
バンプ・オブ・チキンの最新シングル。
気がつけば、アルバム『COSMNAUT』のリリースから、すでに2年が過ぎている(実感なし)。その間にリリースされたシングルは、『友達の唄』、『Smile』、『ゼロ』、『グッドラック』、そして今回の『firefly』でじつに5枚目になる。にもかかわらず、今回のシングルには、そのほかと比べて、飛びぬけた新鮮味がある。というのも、おそらくこのシングルの成り立ちが、それまでのものと異なるから。
これ以前の4枚のシングルは、どれも映画やゲームのタイアップだった。それも、どれもタイアップする側に「バンプの曲を使いたい!」という明確な意思が感じられるものばかりだった。アニメや漫画原作の映画やゲームといった、終わらない少年性をテーマにしつづけるバンプにふさわしい作品群。バンプの側でもそれぞれの表現者に対するリスペクトを表明していた。それゆえか、曲調はそれぞれの作品に寄り添うようなバラードばかりだった。
でも今回のシングルは違う。これにもタイアップはついているものの、使われたのは江口洋介と最近人気の若手女優(名前忘れた)が主演のテレビ・ドラマで、作品そのものがバンプにふさわしい感じがしない。もしかしたら演出家がバンプのファンだとか、そういう理由があるのかもしれないけれど、少なくても僕は知らない。漏れ聞いた話によると『firefly』はツアー中にひょっこりできた曲だという話なので、単にタイアップがついたのは、あくまで商業的な理由、バンプのネームバリューゆえなのだろうと思う。
要するに、今回のシングルはバンプにとって、ひさびさのオリジナルなのだった。外部の要請によって書かれたのではなく、藤原くんの内側から自然と出てきた一曲。それがしかも、シングルとしてはひさしぶりにアッパーなビートのロック・ナンバーなのだから、これはもうファンとしてはこたえられない。
まぁ、アッパーな曲とはいっても、曲自体は複雑なビートを持った、凝ったアレンジの作品で、僕には何度聴いてもどういうリズム・パターンなんだか、理解できなかったりするし、歌詞も抽象的で、なぜに「蛍」というタイトルがつくんだか、よくわからない。要するに、ややとっつきにくいところのある曲だと思う。それでもこのひさびさのスピード感と全体像のつかみきれなさゆえに、何度もリピートしないではいられないという一曲。
カップリングの『ほんとのほんと』は、いちおうバンドでやっているけれど、アレンジは最小限で、まるで藤原くんの弾き語りと変わらないようなラフな作りの曲。カップリング曲が必要だから、間に合わせで作りました、みたいな感じが如実で、曲調もゆっくりだし、徹底的に練り込まれたアレンジの『firefly』とは対照的だ。まぁでも、曲自体は藤原くんならではの誠実な人生問答バラードだから、ファンとしては悪く思えるはずもないのだった。
それにしても、いつの間にかバンプ・オブ・チキンは僕にとって、かけがえのないバンドのひとつになってしまっている。こんなふうに何年も時間をかけてゆっくりと自分の中に入ってきて深く根をおろしたバンドって、ほかにはない。バンプって不思議なバンドだと思う。
(Dec 22, 2012)