Centipede Hz
Animal Collective / 2012 / CD
今年こそちゃんと音楽についても語るぞと──この数年、毎年そう思いながら実現できずにいるけど──いう決意とともにとりあげる今年の1枚目は、アニマル・コレクティヴ、通算9枚目のスタジオ・アルバム。
世界中で絶賛された前作『Merriweather Post Pavilion』に比べると、そこまで評価の高くないアルバムだけれど、僕はこれ、とても好きだった。個人的には前作よりもしっくりきた。
前作が隅々まで気の行き届いた完璧なポップ・アルバムだとしたら、こちらはもうちょっとまとまりを欠いた感じがある。ボーカルは妙に元気だし、全体的にビートのアタック感が増して、ドコドコした音響になっている。基本的には前作と同じ素材を積み上げたのに、ちょっと大きさに不揃いがあったもので、前ほど高い山に積み上げられず、なにやら不安定になってしまいました、みたいな。
でも僕にはそこがよかった。きれいにまとまりきらない、でこぼこした感じがとても刺激的だと思う。ナイン・インチ・ネイルズっぽいハードなビート感を目指してみたものの、結局キャラがヤワ過ぎて、そうはなりきれませんでした、とでもいった感じがとてもいい。それでいて持ち前のあかるさを失っていないし。軟弱者ならではのリアルなダイナミズムが溢れている。
前作を僕はエレクトリック・パレード版の『ペット・サウンズ』と形容したけれど、今回のはそのパレードがところどころで暴走して、ちょっとばかり収集つかなくなってしまったみたいな感じ。そこがとてもツボだった。
僕にとっては去年の新譜のうちで、スピリチュアライズドと1、2を争う1枚。これを聴いて、このバンドのこと、すごく好きになった。旧譜もちゃんとフォローしなきゃなぁと思う。
(Jan 12, 2013)