Love This Giant
David Byrne & St. Vincent / 2012 / CD
去年の来日公演以来、僕にとってもっとも大事な歌姫のひとりとなったセイント・ヴィンセントと、トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンとの異色のコラボレーション・アルバム。
……とはいっても、このアルバム、サウンド・コンセプトで主導権を握っていたのは、やはり大御所のデヴィッド・バーンだと思われる。ボーカルは6:4でバーンのほうが多い印象だし、なにより、セイント・ヴィンセントのあの素晴らしきギターがうしろに引っ込んでしまっている。で、音作りの中心にあるのは金管楽器。
とにかく、このアルバムを印象づけているのはホーンだ。それもソウルやR&B的なものではなくて、普通のロックならばギターやキーボードを使って鳴らすバッキングのフレーズをすべてホーンで鳴らしてみました、みたいな感じ。全編にわたってドラムとベースのリズム隊の上にホーンのリフがかぶさってくる。ギターはところどころで味つけ程度に入ってくるだけ。なにはなくとも、とにかくホーン。ホーン、ホーン、ホーン。
ただ、ホーンが目立っているとはいっても、ジャズのそれのように中心にいるわけではなくて、あくまでバッキングの主役という位置づけ。それゆえ、ギター・オリエンテッドな通常のロックに比べると、若干、音の鋭さに欠ける印象がある。ギターが中心となった場合の切り裂くようなエッジーさはなくて、かわりにホーンが鳴らす厚みのあるリズムで引っぱってゆく感じ。
これってある意味、白人による管楽器の新解釈?って思うようなアルバムだ(僕が音楽をよく知らないからかもしれないけれど)。でもまあ、個性的でおもしろい作品なのはたしか。少なくても僕は、とても楽しく聴かせてもらった。
(Feb 02, 2013)