The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do
Fiona Apple / 2012 / CD
去年リリースされたフィオナ・アップルの、じつに7年ぶりの新作。
これがまた、けっこう地味な印象の仕上がりになっている。
音数の少ない音楽って、このごろのトレンドのひとつだと思うのだけれど――というのは、ジェイムズ・ブレイクとか、フランク・オーシャンとか、ダンス系、ブラック系の人たちが人気を博していることからの印象だけれど――、このフィオナ・アップルも、音の傾向は違うものの、同じような流れの中の作品ではないかと思う。
なんたって、前半の曲にはほとんどドラムが入っていない(──と書いたあとで、あらためて聴き直してみたところ、まったく入っていないわけじゃなかった。でも通常のロックのフォーマットで8ビートをたたくドラムは皆無)。かといって弾き語りというほどシンプルでもない。鍵盤を中心に、オーガニックな感触の音を積み重ねて、必要最低限のビート感を持った、絵画的な歌を生み出している。
いやいや、絵画的、というか、どちらかというと演劇的、だろうか。全体の印象はかなり違うけれど、僕はトム・ウェイツっぽい演劇性を感じた。
で、基本的に全編を通じておとなしめな印象なのだけれど、それでも後半の曲になると、ドラム(というかパーカッション?)が目立つようになって、いくぶん音が厚くなり、迫力が増す。徐々にピークが上がってきて、ラストナンバーでどーんと終わる、その感じもまた演劇っぽい。そしてそうした構成ゆえに、短いながらもなかなか聴きごたえがある作品となっている。歌詞がわからないので、なんとも言えないけれど、これってもしかして、ある種のコンセプト・アルバムなのかもしれない。
まあ、7年ぶりのアルバムがわずか40分にも満たないってのは、若干もの足りない気もあるけれど、長いアルバムばかりのご時世だけに、その短さがかえって心地よかったりもするし、アルバム全体としての統一感と起承転結のイメージのある、いい作品だと思う。
ただし、タイトルはまたもや長すぎて、まったく覚えられない。
(Mar 07, 2013)