2013年5月の音楽

Index

  1. ドリーマーズ・ハイ / RADWIMPS
  2. mbv / My Bloody Valentine
  3. Amok / Atoms For Peace

ドリーマーズ・ハイ

RADWIMPS / 2013 / CD Single

ドリーマーズ・ハイ

 野田洋次郎のソロ、illion のアルバム『UBU』から、わずか半月ちょいという、「なぜ?」ってインターバルでリリースされたRADWIMPSの最新シングル。
 この曲、イントロがシンセっぽいので、最初に聴いたときには、ついにRADWIMPSでも野田くんがキーボードを弾きまくり始めたのかと思ったのだけれど、よく聴けば、音こそシンセだけれど、フレージングはギターのそれだった。つまり桑原くんがエフェクトに凝りまくっているだけなんだろうと思われる。イントロにかぎらず、全編に渡って、きらきら華やかなサウンド・デザインが施されている。
 で、曲自体はというと、3枚目あたりを思い出させる可愛いメロディに、『シュプレヒコール』と同じようなシビアな世界観を語る、意味のつかみにくい歌詞が乗ったもの。要するに、昔ながらのセンスを感じさせつつも、新しいサウンドで、より真摯なメッセージを使えようとしている意欲作。──だとは思うんだけれど、僕としては、かつてのようには歌詞の意味がダイレクトに伝わってこないところが、前作同様に残念ではある。
 ただ、その分、カップリングの『シザースタンド』が素晴らしい。こっちは音作りも世界観も、もっとミニマムなラブソング。こちらも歌詞には、やや抽象的なところがあるけれど、それでも非常にせつない思いが伝わってくるし、アコースティック・ギターとドラムの音色がすごくいい。今年の僕にとってのベスト・ソングのひとつ。
(May 12, 2013)

mbv

My Bloody Valentine / 2012 / CD

MBV

 マイ・ブラディ・ヴァレンタイン、22年ぶりのサード・アルバム。
 いやー、笑っちゃうくらいに変わってない。これぞマイブラというメロディアスかつノイジーな音。僕は彼らのファンを名乗れるほどには過去の2枚のアルバムを聴き込んでいないのだけれど、それでもそこにある明確な個性には、いちロック・ファンとして一目を置かざるを得ない。そしてその「明確な個性」はこの新作でも、まったくぶれることなく再現されている。そこがすごい。
 マイブラの音って、演奏技術的にどうしたというものではないと思うので、真似しようと思えば真似できそうな気がするし、実際に影響を受けたフォロアーだってたくさんいるんだろうけれど、それでいてこのアルバムを聴くと、やはりマイブラはマイブラ以外ではあり得ず、ほかでは代替がきかないんだって思わせるところがすごい。
 変わっていないと書いたけれど、まったく変化がないということもなくて、アルバムの最後のほうでは、以前にはなかったようなアグレッシヴなリズム・パターンが導入された楽曲がつづく。柔らかな轟音、とでもいうべきその昔ながらのサウンドが、後半になると、より今風な複雑な様相を垣間見せる、そこがまた最高にカッコいい。
 今年の前半に聴いたアルバムのうちでも、とびきりに気持ちのいい一作。──といいながら、タイトルはいまだひとつも覚えられないという、ダメな話。
(May 26, 2013)

Amok

Atoms For Peace / 2013 / CD

AMOK (Deluxe Edition)

 レディオヘッドのトム・ヨークのサイド・プロジェクト、アトムズ・フォー・ピースのファースト・アルバム。
 ファーストとはいっても、アトムズ・フォー・ピースというバンドは、トム・ヨーク初のソロ・アルバム『Eraser』をライブで再現するために結成されたバンドなので、位置付け的には彼のセカンド・ソロ・アルバムと考えても問題なかろうって内容になっている。
 実際、アルバムの雰囲気はまさしくあのアルバムの延長線上。最初から最後まで、緻密な音で構築されたクラブ・ミュージックが鳴っている。
 バンド名義ではあるけれど、どこからが人間でどこからか機械か、僕にはよくわからない。生演奏の肌触りとマシン・ミュージックの質感が入り混じった、人間とマシンの境界線の音楽といった印象のアルバム。
 レディオヘッドとの違いはその部分と、あと全編がダンス・ビートで統一されている点。中期以降のレディオヘッドではけっこうな比重を占めるスロー・バラードは皆無だ。おかげでアルバムとしてはダンサブルで、全体としての統一感が高い。
 とにかく印象的なのは細やかな音の作り込み具合で、ダンス・ミュージックであるにもかかわらず、聴いていると、一音一音に耳をすませないではいられない。逆にいえば、ちゃんと耳を澄まさないと、その音楽性の魅力がきちんとつかみきれない。
 このアルバム、僕は通勤中に iPhone で聴いているときには、街中のざわめきや電車の騒音に邪魔されて、とくにいいとも思わなかったのだけれど、その後、静かな部屋でスピーカーから流れてくるその音を聴いて、おいおい、と思った。えれぇカッコいいじゃないかと。
 ということで、このアルバムは静かな部屋でじっくりと聴きたいと思いつつ、でもなかなかそういう時間が作れずに、結果、いまいち聴いた回数は多くないという。そういう体たらくのアルバム。不明の致すところです。
(May 30, 2013)