Indie Cindy
Pixies / 2014 / CD
2003年の再結成からツアーだけの活動をつづけて、はや10年オーバー。前作からはじつに23年ぶりという尋常ならざるインターバルを経て、いまさらなぜ?って感たっぷりにリリースされたピクシーズの5枚目のスタジオ・アルバム。
去年、キム・ディールの脱退という一大事件を経たあとでレコーディングされたものらしいので、出来栄えにはかなり不安があったのだけれど、聴いてみてびっくり。こりゃ
単独で無料配信された『Bagboy』や、先行配信された4曲入りの『EP1』を聴いたときには、不覚にも「ふぅん」くらいにしか思っていなかったのだけれど、こうしてアルバムとして聴いてみると、それらの5曲を含めて、隅から隅までこれぞピクシーズというテイストで一杯。その思わぬ完成度の高さに驚かされた。――というか、なぜに自分が先行シングルのときに盛りあがっていないのか、不思議になった。どんだけいい加減に聴いてんだ、俺。
いやぁ、これは素晴らしい出来ではないでしょうか。あきらかにキム・ディールとしか思えないコーラスをフィーチャーした『Bagboy』――最後の置き土産?――がもっとも昔ながらのピクシーズを強く感じさせるのは否定できないけれど、それ以外の曲にもちゃんとピクシーズならではって味わいがある。
僕はピクシーズの独自の音楽性は、ブラック・フランシスの優れたソング・ライティングにグランジ・サウンドをあわせ、そこにキム・ディールのローファイなベースとコーラスが隠し味として加わるところに生まれるのだと思っていたから、キム・ディールの存在抜きでもピクシーズがピクシーズたりえる、というのはすごく意外だった。キース・リチャーズ抜きでストーンズが成り立たないように、ピクシーズもキム・ディール抜きでは成り立たないと思っていたのに、まさかそうでなかったとは……。
ということで、僕はこのアルバム、とてもいいと思う。マスメディアの評価はいまひとつのようだけれど、それはこのアルバムがリリース以前に3枚のEPにわけて小出しに全曲が発表されてしまっていたせいで、アルバムとしての新鮮さが薄かったのが原因であって(なんでそんなことするかな)、最初からこの形でばーんと出てきていれば、また話が違ったんじゃないかと思わずにいられない。少なくてもピクシーズが大好きって言っていながら、これが嫌いって人がいたら、それはおかしいだろうと僕は思う。
それにしても、僕はブラック・フランシスのソロもひと通り聴いてきているけれど、このアルバムの感触はあきらかにそれとは一線を画している。オリジナル・メンバーがひとり欠けてはいるものの、それでも同じ仲間が集まれば、昔ながらのバンド・サウンドが生まれいずるとは、これいかに。
ロック・バンドって不思議だなぁと、あらためて思わされた一枚。
(May 28, 2014)