風と共に
エレファントカシマシ / CD / 2017
十歳の時に『みんなのうた』で『はじめての僕デス』を歌った宮本が、それから四十年後にふたたび同番組からオファーを受けて書き下ろした新曲。
こどもに聴かせることを前提とした番組なのだから、それこそ『悲しみの果て』や『今宵の月のように』のようなシンプルで力強く明るい曲──でもって、できればもっとメッセージがポジティヴな曲──を期待されていたのではないかと思うのだけれど、これはそういうのとは、ちょっと違う気がする。
ポップはポップなんだけれど、なんだか妙にメロディー構成が凝っていて、一回聴いただけではすっと頭に残らない。歌詞に「逡巡」なんて言葉を使ったりしているところも、あまりこども向きな感じがしないし、ソングライターとしての宮本の最上の部分が出た曲とまではいえないかなぁと思う。
でもまぁ、村山☆潤とともに作り上げた音作りのリッチさや、「あなた」や「わたし」という言葉を選んだポジティヴな歌詞からは、幼いリスナーに向けていい曲を届けたいという誠実な思いが伝わってくる。こういうものに対して、あまりつべこべいうのも野暮なので、うん、いい曲だねといってすませたい(もう十分つべこべいっている)。
カップリングの『ベイベー明日は俺の夢』はそういう縛りがない分、宮本節の炸裂した、いかにもなロック・ナンバー。
この曲でおもしろかったのが、同時収録されたカラオケのインスト・バージョン。
僕はシングルにカラオケ・バージョンを入れて価格を水増しする商業主義的なCDの売り方が嫌いで、大好きなエレカシがそういうことを平気でやっていることには渋い思いが否めないのだけれど、この曲の場合は宮本のボーカルをオーバーダビングしたコーラス部分がカラオケでもちゃんと入っていて、そのためにある種の歌モノの別バージョン的な聴こえ方をするのが妙におもしろかった。
(Oct 02, 2017)