潜潜話
ずっと真夜中でいいのに。 / CD / 2019
去年のうちになにか書かなきゃと思いつつ、結局年を越してしまいました。
現時点での僕にとっての最重要アーティスト「ずっと真夜中でいいのに。」――通称ずとまよ――待望のファースト・フル・アルバム『
気がつけば去年の僕はたった六枚のアルバムの感想しか書いていないけれど、その理由がこのずとまよだった。去年の夏ごろにこのバンドと出会って以来、僕はほぼこのバンドしか聴いてないぜってくらいの状態になってしまっていたから。あ、あとヨルシカ。去年は完全にこのふたつのバンドが僕の音楽生活の中心だった。
いやしかし、なぜに俺はこれほどまでにずとまよが好きなんだろうって。自分でも不思議に思うくらい、僕はACAねの作る音楽に夢中になっている。
このアルバムの収録曲は十三で、そのうち六曲は先行する二枚のミニ・アルバムから再収録されている。ミニ・アルバムには六曲ずつが収録されていたから、つまり既存曲のちょうど半分がこのアルバムに再収録されていることになる。
僕は去年の夏以来その二枚のミニ・アルバム――『正しい偽りからの起床』と『今は今で誓いは笑みで』――を、それこそアナログ盤だったら擦り切れているんじゃないかってくらいに聴いてきた。なのでその収録曲がこのファースト・アルバムにも再び収録されることで、いやおうなくアルバムの新鮮さが損なわれてがっかりする――はずなんだけれど。
まったくそんなことがないことに、自分でも驚く。
僕はこのアルバムに再収録されたナンバー――『脳裏上のクラッカー』『勘冴えて悔しいわ』『眩しいDNAだけ』『ヒューマノイド』『正義』『秒針を噛む』の六曲――をいまだ飽きることなく、繰り返し聴きつづけている。
なんでこんなに飽きないんだろう?
ほんと、僕は自分でも不思議に思うくらいにずとまよが大好きだ。
なにが好きって、その性急に言葉を詰め込むビート感が好き。難解な日本語の歌詞が好き。メロディーのセンスが好き。多彩なアレンジが好き。そしてACAねの声が最高に好きだ。
――要するにお前はずとまよのすべてが好きなんじゃないかよって話だ。自分の娘くらいの女の子が作った音楽をこんなに好きになってしまった自分が我ながらちょっと気持ち悪い。でも好きなんだからどうしよーもない。
このアルバムでは『Dear Mr「F」』『グラスとラムレーズン』『優しくLAST SMILE』の三曲で、それまでに聴かせてこなかったスローバラードを披露しているのも意外性があった(この子は速いナンバーしか歌わないのかと思っていた)。『蹴っ飛ばした毛布』のスローなジャズ・テイストも新鮮だし、『こんなこと騒動』でのイントロのスキャットを歌詞カードに「でぁーられったっとぇん」と書いてみせるセンスには笑った。
あと『優しくLAST SMILE』で女子高生の恋愛をストレートに歌ってみせたのも驚きだった。それまでの楽曲と違って、ハイスクールライフを描いた歌詞があまりに直球で少女マンガ的すぎたもので、ライヴで初めて聴いたときには他人の曲のカバーかと思ったくらい。『居眠り遠征隊』の歌詞にも高校生活的なキーワードが多いし、あぁ、ACAねさんにとっては高校時代っていまだに直近なんだなって。この子って本当に若いんだなぁってしみじみと思った。
ほとんど大好きな曲ばっかりのアルバムだけれど、あえてフェイバリット・ナンバーをひとつだけあげるとするならば、『ハゼ馳せる果てまで』。
「曖昧な解決/どう踠いても/単純問題回答ならば」という歌いだしから始まって、「異なる自分を愛していたいの」とせつなく歌いきって終わるところまで、構成も歌詞も音も歌もすべてが完璧な4分5秒のポップ・ソング(タイトルは意味不明だけど)。
もう本当に好きで好きでしかたありません。
果たして僕がこの深い深い「ずとまよ」沼から抜け出す日はいつになるやら……。
(Mar. 08, 2020)