Song Fro Our Daughter
Laura Marling / 2020 / Apple Music
新型コロナウィルスのパンでミックで発売延期になる作品が多い中、夏のリリース予定を前倒しして、配信先行で発表されたローラ・マーリングの七枚目のスタジオ・アルバム。
『私たちの娘に捧げる歌』というタイトルと、恋人らしき男性のうえに覆いかぶさっているジャケットの写真をみて、もしかして結婚して子供でもできたのかと思ったのだけれど、とくにそういうことではないらしく(少なくても公式発表はなし)。タイトル・トラックはあくまで架空の娘にあてた歌とのこと。
で、音作りはいつもどおりのオーソドックスなフォーク・サウンドだけれど、今作いちばんの特徴は過半数の曲で女性コーラス隊がフィーチャーされていること。
密集を避けろといわれるこの昨今に、これまでと違うコーラス・グループを加えた大所帯的な音作りをしてくるとは珍しい……と思ったら、なんとこのコーラス、ローラさんひとりの多重録音らしい。
クレジットが明記されたCDブックレットとかがないので、確かなことはわからないけれど、少なくてもウィキペディアにあがっているクレジットにボーカリストとしてクレジットされているのはローラさんだけだった。そういわれてみると、確かにすべて彼女の声らしく聴こえる。
でもこれが見事な出来なんですよ。多重録音っていうとどうしても人工的な印象を受けてしまうけれど、このアルバムのそれにはとても自然な響きがある。ふつうに数人の女性が寄り集まって録音しました、とでもいった和気あいあいとした温かさがある。それがこの作品を確実に魅力的なものにしている。
メロディ自体はあいかわらず地味で、全体的にこれは名曲ってほどのキャッチーさはないけれど(少なくても僕にとってはそう)、その点はいつもどおりというか、彼女の音楽はこれくらいでも十分に心地よいのでオッケー。
マイク・リンゼイという人との競作だった前作の『LUMP』は、打ち込みを使ったロック寄りの音響のせいで、いまいちしっくりとこなかったので、今回のソロがいつもどおりの感触でほっとした。やっぱローラ・マーリングにはアコースティック・サウンドのほうが似合う。この春の僕のヘビロテ・ナンバーワン・アルバム。
それにしても、僕が彼女の音楽を聴くようになって今年で、はや十年だって。当時は
(Apr. 26, 2020)