POP VIRUS
星野源 / 2018 / CD
『逃げるは恥だが役に立つ』再放送記念!――ということで、いまさらながら、そのドラマのエンディング・テーマ『恋』が収録された星野源の5thアルバム。
まあ、『逃げ恥』うんぬんは口実で、じつは僕はこのドラマをきちんと観ていないのだけれど――でもガッキーの恋ダンスはいつ見ても心底かわいいと思う――少なくても『恋』という曲については掛け値なしに好きなので、せめてなにか書いておかないといけないとずっと思っていたのでした。
いやぁ、月並みだけれど、僕は本当にこの『恋』という曲が大好きで。リリースからもう四年近くになるらしいけど、いまだにけっこうな頻度で聴いている。でもって、まったく飽きることがない。なんでこんなに聴いているのに飽きないんだろうって、自分でも不思議なくらい。
まぁ、ずとまよやヨルシカなど、最近は比較的そういう曲が増えたけれど、『恋』も僕にとってそういう大事な曲のひとつなわけです。2000年代に入ってからリリースされた日本のポップ・ソングを十曲だけ選べといわれたら、確実にそのうちに入る一曲。
この曲、じつは最初はシングルを一曲だけダウンロードして聴いていたんだけれど、僕はこの「一曲だけ」ってのが性格的にどうも駄目で。シングルだったら、ちゃんとカップリング曲もそろってないと気分的に落ち着かない。
でもその時点で僕は星野源のことを自分が聴くタイプのアーティストではないと思い込んでいたので、いまさらシングルを買うのもなぁ……とその後もけっこう長いあいだ、ためらっていたんでした。
それでも好きなものは好き(どころか大好き)だしなぁ……ここまで好きになった曲を書いた人を否定してちゃいけないだろうと、悩んだあげくに残りの三曲もダウンロードして聴いてみた。そしたらこれが……。
いいんですよ、星野源。たんにメロディ・メイカーとして優れているというだけではなく、音作りにもちゃんとアーティストとして一本すじが通った個性が感じられるのが好印象。決して僕の趣味の真ん中って音ではないけれど、音作りに対するこだわりは伝わってきたし、歌詞も基本的に日本語だけで好感が持てた。なにより、こういう作品ならば、シングル一枚じゃもったいない、アルバムが聴きたいと思わせるだけのものがあった。
なのでその時点での最新作をちゃんとCDで買いました――その頃はまだストリーミングが解禁されてなかったので。それがこのアルバム。
アルバムのタイトル・ナンバーである音数の少ないヒップホップなスロー・バラードから始まり――でも『POP VIRUS』というタイトルはいまだったら絶対につけられないよね――二曲目に名曲『恋』がきて、三曲目のファンキーな『Get a Feel』へとつながってゆく。この冒頭三曲の流れが個人的にはとても好き。
その後も終盤に配されたシングルの『アイデア』や『Family Song』のみならず、楽曲はどれも粒ぞろいだし、締めのDOCOMOのCMソング『Hello Song』に至るまで、ほんとどこをとっても楽しめるポップ・アルバムに仕上がっていると思う。
シングルを聴いた時点で思ったことだけれど、個人的に意外だったのは、全体的にとてもブラック・ミュージック色が濃いこと。それも単に流行りものを真似しているのではなく、自然体でそういう音楽をやっているんだというのがわかる。星野源という人がきちんと洋楽を消化して自身の音楽のバックボーンとしているんだってことが十分に伝わってきた。
あと、この人の音楽には山下達郎あたりに通じる80年代のシティ・ポップのテイストもけっこうある。最初に聴いたときに、このアルバムってそのまま『オレたちひょうきん族』のサントラとして使えそうだなと思ったくらい。そんなところも、僕らの世代にとっては親しみやすさにつながっている。
ということで、僕はこのアルバム、2010年代の日本のポップ・ミュージックを代表する一枚なのではないかと思います。過去の僕同様、星野源というアーティストを知りもせずにあなどっている人がいたら、試しにぜひ一度聴いてみて欲しい。
(Jun. 07, 2020)