The Boy Named If
Elvis Costello & The Imposters / 2021
エルヴィス・コステロの二年ぶりの新譜。
前作が新型コロナウィルスの影響下で生み出されたイレギュラーな作品って印象だったのに対して、今回は王道中の王道。これぞコステロって最高の仕上がりになっている。
同じくインポスターズ名義だった四年前の『Look Now』は、ストリングスほかの多くのゲストを迎えた多彩な音作りが印象的だったけれど、今回はほぼ全編バンドの四人だけの演奏であるのがポイント。コステロの原点ともいうべきバンド・サウンドに乗って、初期の名盤に通じるコステロ節が全編で炸裂している。
それがもう最高なわけです。管弦楽団をバックにバラードを歌うコステロもいいけれど、僕にとってのコステロといえば、やはりこれって感じ。スティーヴ・ナイーヴのオルガンをフィーチャーしたガチャガチャしたバンド・サウンド、これこれ、これぞエルヴィス・コステロのロックンロールだ~。
コステロ先生もそろそろ七十に手が届こうって年齢になって、見た目はすっかりおじいちゃんって感じなのに、それでもバンド仲間で集まって音を出すと、二十代のころと遜色のない音が出せてしまうところがすげー。
基本的に僕はいつでもアッパーな曲のほうが好きだけれど、このアルバムではラストの『Mr. Crescent』のようなしっとりとしたバラードの演奏にも感銘を受けた。オーケストラとかつけてゴージャスにしたら映えそうな曲なのに、音数の少ないバンド・サウンドでそれ相応な情感をかもしているところがいい。そのシンプルなアレンジが逆に味わい深い。
歌詞カードを眺めながら聴いても、僕の英語力ではあいかわらずなにを歌っているんだほとんどわからないけれど、わからないながらも一曲一曲のなかに物語を感じて、いまさらながらその歌の世界の豊饒さに感じ入る。
間違いなくこれぞエルヴィス・コステロの真骨頂といえるアルバムだと思う。
(Jan. 30, 2022)