2022年1月の音楽

Index

  1. The Boy Named If / Elvis Costello & The Imposters
  2. Barn / Neil Young & Crazy Horse

The Boy Named If

Elvis Costello & The Imposters / 2021

The Boy Named If

 エルヴィス・コステロの二年ぶりの新譜。
 前作が新型コロナウィルスの影響下で生み出されたイレギュラーな作品って印象だったのに対して、今回は王道中の王道。これぞコステロって最高の仕上がりになっている。
 同じくインポスターズ名義だった四年前の『Look Now』は、ストリングスほかの多くのゲストを迎えた多彩な音作りが印象的だったけれど、今回はほぼ全編バンドの四人だけの演奏であるのがポイント。コステロの原点ともいうべきバンド・サウンドに乗って、初期の名盤に通じるコステロ節が全編で炸裂している。
 それがもう最高なわけです。管弦楽団をバックにバラードを歌うコステロもいいけれど、僕にとってのコステロといえば、やはりこれって感じ。スティーヴ・ナイーヴのオルガンをフィーチャーしたガチャガチャしたバンド・サウンド、これこれ、これぞエルヴィス・コステロのロックンロールだ~。
 コステロ先生もそろそろ七十に手が届こうって年齢になって、見た目はすっかりおじいちゃんって感じなのに、それでもバンド仲間で集まって音を出すと、二十代のころと遜色のない音が出せてしまうところがすげー。
 基本的に僕はいつでもアッパーな曲のほうが好きだけれど、このアルバムではラストの『Mr. Crescent』のようなしっとりとしたバラードの演奏にも感銘を受けた。オーケストラとかつけてゴージャスにしたら映えそうな曲なのに、音数の少ないバンド・サウンドでそれ相応な情感をかもしているところがいい。そのシンプルなアレンジが逆に味わい深い。
 歌詞カードを眺めながら聴いても、僕の英語力ではあいかわらずなにを歌っているんだほとんどわからないけれど、わからないながらも一曲一曲のなかに物語を感じて、いまさらながらその歌の世界の豊饒さに感じ入る。
 間違いなくこれぞエルヴィス・コステロの真骨頂といえるアルバムだと思う。
(Jan. 30, 2022)

Barn

Neil Young & Crazy Horse / 2021

BARN

 去年の暮れにリリースされたニール・ヤングの最新作。
 二年前の『Colorado』につづいて今回も盟友クレイジー・ホースとの作品で、前作のときにはその音を聴いて「これぞクレイジー・ホースだ~」みたいな感じで盛り上がったけれど、今回は比較的おとなしめな仕上がり。オルガンやハーモニカ、アコギなど、アコースティックな音作りの曲が多くて、エレクトリック・ギターをノーリミットで鳴らすような曲は二、三曲しかない。
 ギタリストは前作に引きつづきニルス・ロフグレンで、なんとそのニルスさん、ギターだけではなくアコーディオンやピアノも弾いている。なんと鍵盤も弾ける人だったとは。――ってもしかして前作でも弾いていたのに気がつかなかっただけなのではという気がしてきた。
 なんにしろ、ひとつ前にとりあげたコステロの新譜と同様、この作品も4ピース・バンドがメンバーだけで音を鳴らしているところがポイントだ。
 しかもこちらはゲストなし。クレジットに名前があるのはバンドのメンバー四人だけという潔さ。そのせいというわけではないだろうけれど、人数は同じでも出てくる音がコステロのバンドとはまったく違っているのがおもしろい。それでも僕にとってはどちらもそれぞれに魅力的。やっぱ俺はバンド・サウンドが好きだなぁって思う。
 洋楽の世界ではすっかりラップやヒップホップが主流で、ロックは過去の音楽って印象になってしまった気がするけれど、世間の流行りがどうであろうと、個人的にはやっぱりロックンロールが最高さ――って。
 そう思わせてくれる御大がいまだ元気でいてくれて嬉しい。
(Jan. 30, 2022)