Hackney Diamonds
The Rolling Stones / 2023
すっかり開店休業状態になってしまっている音楽のコーナーを復活させるぞという新年の誓いとともにとりあげる2024年一発目――となれば、まずはこれでしょう。
ローリング・ストーンズの十七年ぶりのスタジオ・オリジナル・アルバム。
まずは一曲目の『Angry』にびっくりする。
あまりにストーンズの王道中の王道。まったく新曲感なし。初めて聴いたときには「これって本当に新曲?」と疑ってしまったレベル。いまさらこういうのがさらっと出てくるのがすごい。ミックもキースももう八十なのに。
アルバム全体の音響は九十年代以降のストーンズの典型って感じで、全盛期のそれと比べるとドライで深みを欠く印象はあるけれど、なまじ洋楽が打ち込みの音楽ばかりになってしまった昨今、まずギターありきってこのサウンドはそれだけで貴重だ。大音量でガンガン鳴らしたくなる。
二曲だけとはいえ、最後にチャーリー・ワッツが残したレコーディング音源を使った新曲が収録されているのも重要なポイントだ。
しかもそのうちの一曲『Live by the Sword』でベースを弾いているのはビル・ワイマンだよ? オリジナル・メンバーが再集結した最重要曲じゃん!
さらにその曲にキーボードでクレジットされているのがエルトン・ジョンというのにもびっくり。なにそのシックス・ピース・バンド。スーパーレジェンドすぎん?
エルトン・ジョンのほかに、ポール・マッカートニーとスティービー・ワンダーがゲスト参加しているのに、彼らの誰ひとりとして歌っていないのも地味にすごい(ゲスト・ボーカルはレディー・ガガだけ)。この三人を楽器の演奏だけでゲスト参加させられるアーティストなんて、ストーンズ以外にいないだろう。
稀代のメロディメイカー、ポール・マッカートニーが参加している『Bite My Head Off』がまったくメロディアスじゃないのもいい。ディストーションの効いたベースソロを弾くポールの楽しそうな姿が目に浮かぶようだ。
キースがボーカルを取っている『Tell Me Straight』はまるでキースのソロ・アルバムから引っぱってきたような曲だけれど、バック・コーラスにミックの声が聞こえてきて、あぁ、これはまぎれもなくストーンズ・ナンバーなんだなあって思う。
いやしかし、レディー・ガガが参加した『Sweet Sounds of Heaven』で、八十才のおじいさんに「天国の音が聞こえてくる」って歌われると、それはちょっと洒落になってないんじゃないかという気が……。
ラスト・ナンバーはバンド名の由来となったマディ・ウォーターズの『Rolling Stone Blues』のカバーだしねぇ。もうラスト・アルバム感がはんぱない。
キースはインタビューでこれが最後ってわけじゃないぜって言っていたけれど、本人たちにもこれが最後になっても仕方ないという覚悟があるのはまちがいないだろう。
史上最強のロックバンドによる史上最高齢のアルバム。歴史に残る一枚だと思う。
(Jan. 04, 2024)