Accentuate The Positive
Van Morrison / 2023
前回ヴァン・モリソンについての文章を書いたのが2021年で、そのときの『Latest Record Project Vol.1』以降の二年のあいだに、ワーカホリックなモリソン先生は三枚のアルバムをリリースしている。
2022年にはオリジナル・スタジオ・アルバムの『What's Is Gonna Take?』(前作のVol.2ではなく)。その翌年である去年は、スキッフルのカバー・アルバム『Moving On Skiffle』と、黎明期のロックンロール(というかR&B?)のカバーアルバムであるこの『Accentuate The Positive』の二枚を世に送り出している。
本当はあともう一枚『Beyond Words』というインストゥルメンタル・アルバムもリリースしているのだけれど、これはオンライン・サイト限定販売なもんで買いそびれて、聴けていない(ファン失格)。
それも含めるなら計四枚。ほんとにもう働き者。
いまさら遡ってそれらすべての文章を書くのも大変なので、そのうちからあえて一枚を選ぶとするならば、ふさわしいのはオリジナルの新曲を集めた『What's Is Gonna Take?』――だと思うのだけれど、いちばん気持ちよく聴いたのはこの最新作だったので、こちらを取り上げることにした。
というのも、最近はずとまよをはじめ、日本の若い子の音楽ばかりに慣れ親しんでいたから、いまさらこういう昔ながらのオーソドックスなロックンロールで盛り上がったのは、われながらちょっと意外だったから。
好きな曲がたくさん入っているならば楽しくても当然だけれど、そんなこともない。僕の知っている曲はチャック・ベリーの『バイ・バイ・ジョニー』とリトル・リチャードの『ルシール』だけだ(選曲渋すぎ)。
そもそも古いロックンロールということでいうならば、前作のスキッフルだってロックンロールの従兄弟みたいなものだし、そちらはふーんって感じで聴き流してしまった僕が、なぜこのアルバムはこうも気持ちよく聴けるのか?
――って考えても理由はいまいちよくわからない。
あえて答えをひねり出すならば、それは楽曲の短さにあるんだろうと思う。
前作はCD二枚組で一時間半というボリュームに加えて、ラストには九分を超える長尺のバラードが入っていたりして、オールディーズのカバーといいつつ、ヴァン・モリソンのオリジナルに通じる彼らしさが溢れていた。
それに対して今回はどれもコンパクトな三分前後の曲がずらり。しかもバラードは抜き。この曲の短さがポイントなんだろうなと。
前々から僕のずとまよ好きは曲の短さに負うところも大きいと思っている。ACAねの曲は基本四分前後がほとんどで、五分を超える曲はほとんどない。基本BPMが速いせいで、どんな凝った曲でも四分台でさくっと終わる。そこがいい。
決して長い曲が悪いと思っているわけではなくて、長くても好きな曲はいくらでもある。僕が一生モノと思って愛聴しているザ・キュアーの『From The Edge Of The Deap Green Sea』やスプリングスティーンの『Rosalita』は七分超えの名曲だ。
でも、どちらかというと、やはり長い曲よりも短い曲のほうが、リピートしやすいため、あとを引く。適度な長さのアッパーな曲が次々と入れ替わり立ちかわり鳴りつづけるのって、とにかく気持ちいい。
このアルバムはそんな気持ちよさが溢れている。
やっぱポップソングにおいて曲の短さは正義なんだなと思った次第。
(Feb. 10, 2024)