Coishikawa Scraps / Music

2026年のコンサート

Index

  1. 宮本浩次 @ 日本武道館 (Jan. 10, 2026)
  2. ずっと真夜中でいいのに。 @ 日本武道館 (Feb. 28, 2026)
  3. 宮本浩次 @ ぴあアリーナMM (Jun. 12, 2026)
  4. HARRY & THE BIRTHDAY @ SGCホール有明 (Jul. 17, 2026)

宮本浩次

tour 2026 新しい旅/2026年1月10日(土)/日本武道館

 新年のライブ初めは今年もエレカシ!――ではなく、宮本浩次@日本武道館。

 『新しい旅』と題された今回のツアー、なにが驚きだったかってその内容。

 去年『俺と、友だち』をやった直後だし、このタイトルだし、当然その流れをくんで、新しい仲間たちとツアーをまわるんだと思い込んでいたら、そうじゃなかった。

 開演前に、以前にも聴いたことがあるような、ふわっとした環境音楽みたいなのが流れてるのを耳にした時点で、あれ、もしかしたら? とは思ったんだよなぁ……。

 キーボード、小林さんじゃん……。

 ギター名越由貴夫、ドラム玉田豊夢、ベース須藤優に、キーボードが小林武史って。

 『ロマンスの夜』のときのバンドと一緒じゃん!

 まぁ、メンバーは一緒でも、やっている内容が激変しているというのならばともかく、あまりに代わり映えしなくて逆にびっくりだった。

 いや、『さらば青春』とか『ハローNew York』とか、エレカシのレアなシングル・カップリング曲が聴けたり、エレカシだと嬉しくない『彼女は買い物の帰り道』がソロだと妙にしっくりきちゃったりするのは一興だったけれども。

 それでもあとは基本、これまでに観たソロ・コンサートと同じ。映像なしだった前回とは違い、今回はスクリーンも三面ちゃんとある。『木綿のハンカチーフ』が電車のガタンゴトンという効果音のあとで始まるのとか、『ハレルヤ』で手書きの歌詞が出たりする演出とか、前とまったく一緒じゃーん!

 宮本にとっては、レコーディングに小林さんが絡んでいない『風と私の物語』と『I AM HERO』をこのバンドで初めてやることに意味があるのかもしれないけどさぁ。

 でも、それをもってして『新しい旅』とか言われてもなぁ……。

 あぁ、なるほど。『新しい旅」ってのは、つまり「新年ツアー」を言い換えただけってことだったのか……って。もうがっかりだよ。

 でもまぁ、前述したエレカシの三曲を含む第一部はそれでもけっこうよかった。『光の世界』から始まってすぐに『Do you remember?』でがっと盛り上げる感じとか、緩急のつけかたが巧みで、選曲の意外性もあって、いい出来だと思った。『化粧』、『風に吹かれて』、『sha・la・la・la』、『風と私の物語』、『I AM HERO』など、個人的に愛着のある曲や、新曲が並んでいたこともあって、お、きょうのコンサートはけっこういいかもと思った。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 光の世界
  2. Do you remember?
  3. さらば青春
  4. 化粧
  5. over the top
  6. ハローNew York
  7. 彼女は買い物の帰り道
  8. 風に吹かれて
  9. 今宵の月のように
  10. sha・la・la・la
  11. 風と私の物語
  12. I AM HERO
    [第二部]
  13. Woman "Wの悲劇"より
  14. 異邦人
  15. 哀愁につつまれて
  16. 悲しみの果て
  17. rain -愛だけを信じて-
  18. 昇る太陽
  19. ハレルヤ
  20. 俺たちの明日
  21. Today -胸いっぱいの愛を-
  22. 木綿のハンカチーフ
  23. close your eyes
  24. P.S. I love you
    [Encore]
  25. 冬の花
  26. 夜明けのうた

 くじけたのは、この日も第二部――とくに『rain -愛だけを信じて-』以降。

 前回同様、この曲のサビの口パクパートでどっちらけてしまう。

 本当にあそこでテープを使うのはやめて欲しい。もしくは使うならば、低いパートを録音にして、高いパートを生で歌って欲しい。なまじ耳に残るパートが口パクなので、気分が萎えることはなはだしい。

 基本的にソロの場合はセットリストではエレカシに遠く及ばないのだから、せめて宮本の歌声の気持ちよさを心から楽しみたいわけですよ? なのに、なぜに楽しめなくなるようなパフォーマンスをしてみせるかな? まったく理解できない。

 この日は第二部の比較的早い時間帯にこの曲が持ってきてあったので、そこから先がずっとダウナーな気分のままになってしまった。

 あと、首を傾げたくなったのが、『Today -胸いっぱいの愛を-』の演出。『ハレルヤ』と同じように、宮本の手書きの文字で「Today、イエイエーエェー」みたいなのが表示されていたけれども、なにあれ?

 『ハレルヤ』は「幸あれ~」というポジティブなメッセージの曲だから、まだわかるんだけれど、「イェイ、イェイ」みたいな歌詞を見せられて、いったいどうしろと?

 ユーモアのつもりだったとしたら、ズレすぎている。そもそも字も汚いしなぁ……。宮本の手書き文字を見られて嬉しいって喜ぶオーディエンスばかりだと思ってんだろうか。なに考えてんだかさっぱりわからない。

 とにかくさ、もう余計な演出なんていらないんですよ。宮本はただ歌ってるだけで十分にカッコいいんだからさ。全力で歌っている姿が見られれば、それだけで僕らは満足なんだから。下手な演出は逆効果だってことに気がついて欲しい。

 去年のバースデーコンサート以来ずっと歌われている『哀愁につつまれて』とか、思ったよりいい曲かもって気がしてきたし、最初の二番くらいまでは小林さんのキーボードだけで、そのあと玉田豊夢のドラムがドコドコと入ってくる『木綿のハンカチーフ』のミニマムなアレンジとかはけっこう好きなので、なにもかもが悪かったとまでは思わないんだけれども。

 でもやっぱ、なにより『rain』が駄目。なまじ曲自体はいいので、それが中途半端なパフォーマンスのせいで楽しめなくなってしまっているのがもどかしくて仕方ない。

 あと、やっぱ本編の締めが『P.S. I love you』ってのがなぁ……。

 僕はいまだに「愛してる」を連呼する宮本浩次に慣れることができないでいる。

 アンコールのラストが『夜明けのうた』だったので、前回と比べればいくらかあと味はよかったけれども、そんなこんなで今回も満足したとはいい切れない、残念無念な宮本の新春公演――ではなく最新ツアーの初日だった。

 あぁ、せっかくの武道館なんだから、もっとがっつりと楽しみたかったよ……。

(Jan. 21, 2026)

ずっと真夜中でいいのに。

ZUTOMAYO INTENSE II「坐・ZOMBIE CRAB LABO」/2023年2月28日(土)/日本武道館

形藻土

 ずとまよ二度目のアジアツアーのこけら落しとなる日本武道館公演の初日。

 ずとまよを武道館で観られる!――ってんで、今回もこれは絶対に観なきゃと2デイズ両方申し込こんで、二日分のチケットを確保できたのだけれど、うちの子も興味があるというので、二日目は譲った。なので僕が観たのは初日のみ。

 今回のツアーは海外公演を含む――というか、ツアータイトル的には海外こそが主体――というところがポイントだった。

 おそらく巨大なセットを海外へと持ってゆくのが現実的ではないからだろう。ステージセットはいつになくシンプルで、これまでのようにその豪華さに驚かされることがなかった。

 ステージ左袖には西洋風の墓石と枯れた樹のセットが配されていた。反対の右手にもなにか屋台みたいなのが飾ってあったけれど、遠くてなんだかわからず(僕らの席はステージ向かって左手、一階席の南西十列目)。

 あとは短めの花道があって、Lの字を角を頂点に倒したような左右非対称の三角形にLEDライトを配したセットがステージ前面を飾っているだけで、ステージ上にはとくになにもないようだった(少なくても僕らの席からは確認できなかった)。

 そのかわりに今回は全面のバックスクリーンが配されている。つまり物理的なステージセットの代わりに映像演出が主体だった。ものづくりへのこだわりが強いACAねさんにとっては不本意そうだけれど、海外を視野に入れてコストを考えたら、こうならざるを得ないんだろうなと思った。でもそういう海外仕様のずとまよを見られるというのが今回のツアーのおもしろさだ。

【SET LIST】
  1. 形 [Short Ver.]
  2. 勘ぐれい [Short Ver.]
  3. 低血ボルト [Short Ver.]
  4. 残機
  5. シェードの埃は延長
  6. 蟹しゃぶふぁんく [新曲]
  7. 奥底に眠るルーツ
  8. クリームで会いにいけますか
  9. 彷徨い酔い温度
  10. ばかじゃないのに [即興Ver.]
  11. よもすがら [新曲]
  12. 秒針を噛む
  13. お勉強しといてよ
  14. 海馬成長痛
  15. アンチモン [新曲]
  16. ヒューマノイド
  17. マイノリティ脈絡
  18. あいつら全員同窓会
  19. TAIDADA
  20. 間人間 [新曲]
  21. 正義
  22. 脳裏上のクラッカー
  23. メディアノーチェ

 映像は波打ち寄せる岩場の海面から朽ちた時計塔がつき出ているゴシック風のものがメイン・イメージ。

 「ゾンビ蟹ラボ」というツアータイトルのコンセプトに準じて、オープニングはゾンビに扮したオープンリールの二人による寸劇でスタートした(このパートが無駄に長い)。

 彼らが花道の先端に描かれた魔法陣のところまでいって、なにやらごにょごにょと呪文みたいなのを唱えると、奈落からドラキュラが入っているような棺桶がせり上がってくる。棺の蓋があくと、そこには花で埋め尽くされた中に横向きになって眠るロリータファッションのACAねの姿――。

 そのまま一曲目の『形』のイントロが始まり、ワンコーラス目はACAねは微動だもせずに横たわったままで歌を聴かせた。あれは本当に歌ってたんですかね?

 ワンコーラス(のサビ前まで?)が終わったところでいったん演奏がブレイクして、ACAねが眠りから覚めたというジェスチャーとともにゆっくりと棺を抜け出す。そのままギターを手にして、棺の前に用意されていたマイクスタンドに向かって、毎回恒例のひとことめ、「《ずっと真夜中でいいのに。》です」の挨拶をして、つづきを歌いだした――んだったと思う(いささか記憶があいまい)。

 とりあえずゾンビとロリータファッションの組み合わせを見て、ペローナじゃん!――って思いました(@『ONE PIECE』スリラーバーク編)。そういうオーディエンスがたくさんいたに違いない。

 この『形』から始まる冒頭三曲はどれもメドレー気味のショートバージョンだった。でもメドレーってほどにはつながりを意識していないし、どうせならばフルで聴かせて欲しかった。

 今回は新譜『形藻土』のリリースを一ヵ月後に控えてスタートするツアーなので、どれだけ新曲が演奏されるかも注目ポイントだったわけだけれども――。

 結果からいうと、この日演奏された未発表曲は四曲。

 序盤に弾き語り気味でワンコーラスだけ演奏された曲は、蟹がどうしたという歌詞がコミカルな感じで(『蟹しゃぶふぁんく』という曲らしい)、これってデモテイク?――って思ってしまうような簡素なアレンジだった。

 中盤には配信ドラマ『時計館の殺人』の主題歌として書きおろされた『よもすがら』が演奏された。これはちょっと歌謡曲っぽいテイストのシリアス路線の曲。

 後半に歌詞がまったく聴き取れない浮遊感のある洋楽タッチの新曲がひとつと、「板チョコ」を「痛チョコ」と語呂合わせした新曲(これだけ歌詞つき)が披露された。

 以上四曲。今後ツアーの途中で新譜がリリースになったら、また別の曲が加わってくるんだろう。

 定番になっている三択アドリブ演奏コーナーは、ACAねがゴルフのパットをして、当たったゲートの曲を演奏するというもので、この日の曲目は『ばかじゃないのに』だった(翌日も同じだったらしい)。

 最初の寸劇にしても、ああいうのって日本語のわからない海外にいってもやるんですかね? 大丈夫なの? ってちょっとだけ心配になった。

 少なくても僕個人はあの手の余興にすっかり食傷気味になっているので、余計なことはしなくていいから、もっと音楽を聴かせてよって思う気持ちが強くなっている。しゃもじも、前後左右見回してみても、いまや持っていない客は俺だけじゃん?――ってくらいの普及率だしなぁ……。そろそろずとまよライブも卒業の頃合いかもしれない。

 いずれにせよ今回のツアーは海外を視野に入れているところが肝だった。新曲も披露されたけれど、それ以上に懐かしの初期の名曲が多かった。『ヒューマノイド』とか『脳裏上のクラッカー』とか、すごいひさびさ感があった。ラストひとつ前の『正義』での恒例ピアニカイントロは、この日は『威風堂々』のバンド演奏に流れ込む豪華版。

 バンドはドラムがよっち、ベース二家本、キターコジロー、鍵盤岸田、ホーンがたぶんふたり、オープンリール三人という構成――だったはず。個人名でのメンバー紹介がなかったし、斜めな角度から見ていて、ステージ構成がよくわからなかったので、誰が誰やらという感じだった。

 コンサートの締めは、これも生では初披露となる『メディアノーチェ』。曲の前に「今回は本編の構成を大事にしたいのでアンコールにはお応えできません」みたいなMCでのお断りがあって、その曲のあと、ACAねはメンバーたちと一緒にふつうにステージを去っていった。

 ACAねの退場シーンもいつもだと見どころのひとつなので、そういう普通の退場の仕方ひとつとってみても、今回のツアーはイレギュラー感があった。

 でもまぁ、馴染みのない新曲こそあれ、それ以外はずとまよのストロング・スタイルといってしかるべき印象のセットリスト――だったのですが。

 個人的にはもっとも聴きたかった『微熱魔』がまさか演奏されないとは!

 うちの奥さんは「『ミラーチューン』が聴けなかった」と嘆いていたし、翌日うちの子は『嘘じゃない』が聴けなくて残念だったといっていたそうだ。

 ほんと体力的に厳しくて、そろそろライブ全般からの引退を考え始めていて、前述したとおり、この頃のずとまよライブは余興が過ぎていささか心が離れ気味な部分もあるのだけれども、もう一度生で『微熱魔』が聴きたいので、いましばらくは通おうかと思っている。

(Mar. 15, 2026)

宮本浩次

60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!/2026年6月12日(金)/ぴあアリーナMM

 宮本浩次、記念すべき六十歳の誕生日に開催されたバースデイ・コンサート。今年も無事にチケットが取れました。

 今年は遅刻もしなかったし、席もまあまあよし。花道を左手の真横から眺める一階スタンド席。最高とはいえないまでも、宮本の姿が肉眼で追える距離だから、十分にいい席だった。われらがチケット運、いまだ衰えず。

 さて、還暦を迎えた宮本が、六十代最初の一曲に選んだこの日のオープニング・ナンバーは『I love 人生!』。

 それもスタートはステージではなく楽屋から。あの曲のイントロのドラムループに乗せて、これからステージへ向かおうとする宮本の姿をカメラが追う映像がスクリーンに映し出される。まっすぐステージに向かわず、ところどころにおふざけを挟む、おちゃめな六十歳の一挙一動に湧く客席。

 ようやくステージの袖に到着ってところで映像は途切れ、いざ登場ってシーンでは、左右に配置された縦型のスクリーンに、この日の主役の全身像がドーンと映し出される。

 黒のスーツにダークレッドのシャツ。首にはシャツと同じ色のスパンコールのマフラー。でもって黒い中折帽をかぶり、帽子に上から手をあてて、ポーズを取っている。それを見て思いました。

 マイケル・ジャクソンかよっ!

 あとで聞いたら、うちの奥さんもそう思ったらしい。まぁ、僕らの世代にとっては共通認識だろう。あのファッションとポーズを見て、マイケル・ジャクソンを思い出さない人のほうがおそらく少数派だ。

 いやしかし、宮本を見てマイケルかと思う日が訪れようとは……。

【SET LIST】
    【セットリスト】
    [第一部]
  1. I love 人生!
  2. 漂う人の性
  3. 悲しみの果て
  4. over the top
  5. 昇る太陽
  6. ジョニィへの伝言
  7. 哀愁につつまれて
  8. 飾りじゃないのよ涙は
  9. 風に吹かれて
  10. close your eyes
    [第二部]
  11. 夜明けのうた
  12. 愛を抱きしめろ
  13. はじめての僕デス
  14. 今宵の月のように
  15. ロマンス
  16. rain -愛だけを信じて-
  17. 俺たちの明日
  18. ハレルヤ
  19. Today -胸いっぱいの愛を-
  20. あなたのやさしさをオレは何に例えよう
  21. I AM HERO
    [Encore]
  22. 冬の花
  23. P.S. I love you
  24. RESTART

 この日は還暦祝いってことで、その後の衣装もずっと赤を基調にしていた。

 第二部では黒いロングシャツの脇腹あたりに縫いつけられた赤いシフォンのスカーフみたいなやつがひらひらと靡いていた。

 終始クラシックなデザインのものしか身につけない宮本にしては随分と珍しい衣装だなと思ったら、やっぱ着ていて落ちつかなかったのか、二曲ぐらいで着替えて、ふつうの黒の上下に戻ってたのがおかしかった。そのときもネクタイは赤だった。

 でもってアンコールは全身赤! 赤いスーツに赤いシャツ、赤いネクタイ。ただ靴だけが黒い(京極堂の憑き物落しの衣装と逆!――なんて思うのはエレカシファンで俺だけ?)。靴もエナメル製で、光を反射してぴっかぴかだった。

 さすが六十周年。いままでにないお色直し四回は――趣味のよしあしはよくわからないけれど――過去最高にレアだった。

 その一方で音楽自体に関しては、とてもオーソドックス。二曲目に『漂う人の性』を持ってきたときには、エレカシの曲を積極的に取り入れたキャリア総決算的なステージになることを期待したのだけれど、終わってみればレアだったのはそれとラストナンバーくらい。あ、あと「実は歌手デビュー五十周年です」という説明につづけて、縦型サイネージに映し出されたアニメの少年と並んで歌った『はじめての僕デス』くらい(ふたたびこの曲を生で聞くとは思わなかった。こうなると将来的にまだまだ聴く機会がありそうな……)。

 いずれにせよ、それらを除くと、あとはソロのド定番って感じだった。バースデイ・ライブでここまでスタンダードな宮本を感じるセットリストって逆にレアかもって思った。六十歳になった最強の自分を見せたいという意識の表れだったのかもしれない。

 バンドは小林武史、名越由貴夫、玉田豊夢、須藤優というお馴染みの面々。なので音作り的にもおなじみの安定感。宮本がアコギを弾く曲がいつもより多かった気がしたけれど、でも最初だけ弾いてあとは放り出しちゃうパターンがほとんどで、実質的には弾いてないも同然だった。ギターはもっとちゃんと弾いて欲しいぞ。

 新譜『I AM HERO』が出たばかりなので、そのアルバムに収録された新曲がどれだけ聴けるかも注目ポイントだったわけだけれども、初披露された新曲は『愛を抱きしめろ』一曲だけだった。公演終了後にアリーナ・ツアーのスケジュールが発表されたので、新曲はそちらで聴いてくださいってことだろう。

 ちなみにこの曲は第二部の二曲目(『夜明けのうた』の次)に演奏された。宮本には珍しいジャングル・ビート(それともセカンド・ライン? 違いがよくわからない)のこの曲のイントロが鳴った途端、座っていたうちの奥さんがすっと立ち上がった。最近は腰が悪くて率先して立ったりしないのに珍しいなと思ったら、本人曰く、あのイントロを聴いたら身体が勝手に反応しちゃったんだそうだ。ニューオリンズ愛あふれててすごいなって思いました。

 すごいといえば、『over the top』だったかの映像演出――割れたガラスの万華鏡みたいなやつが回転しながら大小様々なサイズで宮本の姿を映し出すやつ――もすごいと思った。さすがAI時代。リアルタイムであの映像を作る演算能力って、もやは理解の範囲外だ。プログラマとしての引退の日近し。

 あと、アンコールの最後だったか、スクリーンに『I love 人生!』のアートワークを模した六十本の蝋燭が映し出されて、それを宮本がオーディエンスと一緒に吹き消す(ふりをする)というフレンドリーな余興があった。ステージを横から眺める形だったせいか、映像系の演出に関しては、印象に残っているのはそれくらい。

 物理的なステージセットだと、第二部の始まりの『夜明けのうた』で、花道のサブステージが一メートルくらい持ち上がったのがレアだった。最近のアーティストではありがちだけれど、宮本もいまやこういう演出しちゃうんだって思った。

 でも宮本さんの場合、複数のスポットライトに照らされたそのステージから、歌の途中で降りてしまう。無人のステージでマイクスタンドだけがスポットライトを浴びている風景は、なんかちょっと間違っている気がした。でもまぁそういう自由気ままなところも、らしいっちゃらしい。

 そういや、この日のライヴはいちばんステージに近い席が三万円もしたので(お土産に虎屋の羊羹がもらえたらしい)、そのことに対するお礼の意味を込めてか、宮本が客席に降りていって、花道のまわりを徘徊するシーンが二度三度あった。まぁ、前にもやっていた気はするけれど、今回はちょっと多めな気がした。

 前回、前々回はいまいちだったようなことを書いてしまったけれど、今回は最初から還暦祝いという特別な回だったので、こちらのご祝儀気分も手伝って、とくに不満に思うこともなく、楽しく観させてもらった。今回は『rain』の口パクにもつべこべいわない。

 でもって、なによりよかったのがラスト・ナンバー。

 アンコールで『冬の花』、『P.S. I love you』という、〆の定番中の定番って二曲を聴かせて、これで終わりかと思ったそのあとに。この日はもう一曲やってくれた。

 それがなんと――エレファントカシマシの『RESTART』~!!!!

 六十歳になったその日の最後に「再出発!」って歌って終わるというね。

 こんなカッコいい締め方ってある?

 やっぱ宮本浩次は六十になってもなお特別だと思わせてくれた最高の一曲だった。

 宮本、お誕生日おめでとう!

(Jun. 24, 2026)

HARRY & THE BIRTHDAY

TOUR 2026 "Gotta Move" FINAL/2026年7月17日(金)/SGCホール有明

 スライダーズが解散してから、はや四半世紀以上。いまごろになって初めてハリーのソロでのライブを観た。

 これまでハリーのライブで観たことがなかったのは、レコーディング作品にスライダーズのころほど惹かれなかったのに加え、途中からは作品がインディーズでしかリリースされなくなってしまい、手に取りにくくなったのが一因。作品をきちんとフォローできていないと、やはりライブって足を運びにくい。

 さらにはライヴの内容も弾き語りとか、ドラムだけとか変則的なものが多くて、絶対に観たいと思うほどではなかったので、観にゆくタイミングがつかめず、今日にいたるという感じだった。

 ここ数年はコンサート・チケットの高騰が著しくて、一枚一万円を超えるのがあたりまえになってきてしまい、僕自身の体力の衰えや腰痛や預金残高の少なさもあいまって、以前のように気楽には足を運びにくくくなってきてしまったので、もうこのままハリーのライブは一度も観ずに終わるのかもなぁと思っていた矢先に発表されたのが、以前に夏フェスで共演したThe Birthdayとのツアーだった。

 チバくんなきあともThe Birthdayとして活動をつづける三人の演奏をバックにしたハリーのライブが観られる!

 もしもこの先ハリーのライブを観るのがたった一度だけだとしたら、これ以上の機会はないのでは? これを観ずしてなにを観る――。

 そう思って先行チケットの抽選に申し込んだものの、豊洲PITでの東京公演は落選。二公演ゆくのは懐具合が厳しいので、日和ってZepp Hanedaは申し込まなかったのが失敗だったか……と思うもあとの祭り。残念だけれど、いままでちゃんとフォローしてこなかった自分が悪い。このまま一生ハリーのライブは観れずに終わるんだろうなって思っていたところへ、追加で発表されたのがこのツアーファイナルだった。

 会場は三月に開業したばかりのSGCホール有明。東京ガーデンシアターに似た造りのホールで、キャパは五千人とあちらよりは少ないものの、すでに東京で二公演を終えたあとの追加公演だ。さすがに今回はチケットが取れました。しかも一階席のステージ向かって左手の、前から十六列目という良席。スライダーズの復活ライブのときよりもステージが近い! まぁ、右手にいたフジイケンジだけは前の人に遮られてよく見えなかったけれど、あとの三人はしっかりと視野に収まっていた。

【SET LIST】
  1. Respectable Performer
  2. Nowhere to Run
  3. 雨ざらし
  4. 針と匙
  5. Whiskey Heads
  6. ALRIGHT
  7. On The Road Again
  8. Uh, Ah, Oh, Ah (HARD DRUNK MAMA)
  9. 壬生狂言
  10. Sweet Pain
  11. Gotta Move [新曲]
  12. You Can't Be Serious
  13. Naked Rhythm
  14. RUIN
  15. 世界の終わり
  16. ROLLしねえ
    [Encore]
  17. カレンダーガール
  18. Tokyoシャッフル
  19. Let's go down the street

 定刻を過ぎてしばらくして客電が落ち、五十年代のオールディーズらしきナンバーがSEで流れるなか、The Birthdayのメンバーが登場~。最後にハリーが出てきて、フジイケンジのギターのイントロからコンサートが始まる。

 一曲目は『Respectable Performer』――というタイトルなのを、サビにそのフレーズが出てきて知りました。ごめん、ハリーの履修が浅すぎた。

 でも馴染みの薄い曲でもなんの問題もなし。とにかくバンドの音がカッコいい~。

 キュウちゃんのドラムとヒライハルキのベースに引っぱられて、ハリーとフジイケンジのギターがノイジーに絡み合う。これこれこれ。こういう音が聴きたかったんだよ~って、まさに僕が望むギター・ロックの理想形。スライダーズとThe Birthdayってどちらも僕にとってはそういうバンドだったので、その両者のコラボは予想以上に最高だった。

 この一曲目ではハリーのボーカルがよく聴きとれないほど音もでかかった。二曲目以降はミキサーの調節がよくなったのか、はたまた単にそこまでギターをかき鳴らさない曲がつづいたからか、そんなこともなくなったけれど、でもとにかく一曲目はとにかく音がでかかった。でもって、それがとても気持ちよかった。

 かつてはエレカシのライヴ帰りには耳鳴りがして、相方の声がよく聞こえないなんてことがあった。最近はそういう経験がすっかりなくなったけれど、この夜はちょっとだけそのころに近いものがあった。やっぱロックはこういうのがいいよなあって思った。もうこの一曲目を聴いた時点で、この夜のライブが最高のものになるのを確信した。このバンドの音を二時間も浴びられるんだよ? これが最高でなければなんだろう?

 ハリーとThe Birthdayのコラボってことで、どのバンドの曲をどんな比重でやるのかも要注目だったわけだけれど、セットリストの中心となったのはハリーのソロ・ナンバーで、それ以外は六曲だけだった。全部で十九曲だったから、約三分の一弱。

 ハリーはソロでもスライダーズの曲をやっている印象だったし、それなりにスライダーズの曲も聴けるだろうと思っていたのに、ほとんどやらなかったのは予想外。演奏されたスライダーズ・ナンバーはわずか三曲で、本編で演奏されたのは『On The Road Again』一曲だけだった。

 でもこの曲がいい。スライダーズの再結成ライブで必ずやるだろうと思っていたのに聴けずに終わったこの曲を、あえてこのツアーでやってくれたことが嬉しかった。それはアンコールの『Tokyoシャッフル』もしかり。いまさらこの曲をツイン・ギターのバンド・サウンドで聴けるのって、嬉し過ぎでしょう?

 本編の大半はハリーのソロ・ナンバーで、いまいち馴染みが薄かったとはいえ、知らない曲はひとつもなかったし、とにかくバンド・サウンドが最高なので、それだけで十分に楽しいところへきて、このツアーではコラボゆえのサプライズがいくつか用意されていた。これがまたたまらない。

 まずは冒頭からソロ・ナンバーをつづけたあと、六曲目に披露されたのが『ALRIGHT』。

 The Birthday初期のEP『プレスファクトリー』の収録曲で、オリジナル・アルバムには未収録のせいで、僕はサビにくるまでThe Birthdayの曲だって気がつかなかった。いまいち馴染みの薄いこのバラードを引っぱり出してくるあたりもふるっている。

 ちなみに「夢をみようぜBady」と歌うこのナンバー。僕にとっては、いやおうなく宮本を思い出させるこの歌詞に、なんで同じことを歌っても、チバくんやハリーのほうがカッコいいんだろうなぁって思いながら耳を傾けていた。

 この曲の次が前述した『On The Road Again』で、ここの流れはこの日の序盤のクライマックスだった。

 二つめのサプライズはライブの中盤に演奏された新曲『Gotta Move』。

 まさかこのツアーのために、ツアータイトルを使った新曲を用意しているなんて思わないじゃん。ミディアム・テンポのブルージーなナンバーで、一聴しただけで記憶に残るようなキャッチーな曲ではなかったから、もう一度聴かせてもらっても同じ曲だとわからない可能性大だけれど、それでもわざわざ新曲を用意してくれた心意気にぐっときた。

 そしてこの夜最大にして最高のサプライズが本編のラスト・ナンバー『Rollしねえ』の前に鳴らされたあの曲――。

 フジイケンジが弾き始めた高速ギターカッティングのイントロを聴いて耳を疑った。

 えっ?

 これって、まさか?

 ハリーのソロにこの曲に似ているイントロの曲ってあったっけ?

 そんなフジケンのギターに、ヒライのベースが加わり、キュウちゃんのドラムが鳴った瞬間に、戸惑いが確信にかわった。そしてぶわっと鳥肌がたった。

 『世界の終わり』だあああぁ~~!!!!

 いやいやいやいや。まさかこの曲をふたたび生で聴く日がこようとは……。

 それもハリーのボーカルで。

 チバくんはThe Birthdayではまったくミッシェルの曲を演奏してこなかったので、フジケンとヒライハルキがこの曲を演奏するのも、おそらく今回のツアーが初めてでしょう? キュウちゃんにとっても、プライベートはいざ知らず、公式ではミッシェルの解散ライブ以来ではないんだろうか。

 The Birthdayとのコラボでなぜこれ?――とは思ったけれど、おそらくハリーにとっては、いまは亡きチバユウスケに対する追悼の意味を込めたトリビュートだったんだろう。スライダーズのトリビュートに参加してくれた返礼として、チバくんの曲をカバーするならば、彼の最高傑作であるこの曲をぜひやりたいと思ったんだろうきっと。ハリーのその思いにミッシェルのオリジナル・メンバーであるキュウちゃんが賛同したからこそ実現したと思われる夢のような衝撃のトリビュート・ナンバーだった。

 ということで、この名曲のあとに『Rollしねえ』を聴かせてもらって本編は終了。

 いまだ『世界の終わり』の余韻さめやらぬ中、最近のライブには珍しくずいぶんと待たされて始まったアンコールの一曲目は、The Birthdayの『カレンダーガール』。

 また意外な選曲を……。

 でもまぁ、チバくんの不在ゆえに、あえて王道をはずした、変化球的な選曲にならざるを得なかったのかもしれないとも思う。

 この曲ではワンコーラス目をハリーが歌ったあと、キュウちゃん、ヒライハルキ、フジケンの順でボーカルをまわして全員が歌うという趣向だった。チバくん抜きのライブでは三人ともボーカルを取っているようなので、そのことに対するハリーからの配慮だったのかなと思った。この曲に限らず、ハリーの歌に三人が持ち回りでコーラスをつけていたのも、このライブのよかった点。

 アンコールはそのあとに前述した『Tokyoシャッフル』があって、最後は『Let's go down the street』で締め。そうだよなぁ、スライダーズのトリビュートでThe Birthdayが演奏したこの曲は外せないよねって思いながら聴いてました。

 フジケンとキュウちゃんはハリーと十才違いだけれど、ヒライハルキとはちょうど二回り離れている。そのせいか、ハリーがThe Birthdayのメンバーを紹介する際の呼び方が、フジケン、ハルキ、クハラだったのも、なんかメンバー個々に対する距離感が伝わってきておもしろかった。年の離れた彼らと一緒に演奏するハリーがとても楽しそうだったのが、この夜もっとも印象的だったことかもしれない。

 あと、ハリーのファンはいかにもって人が多かった。会場へと向かう道すがら、あ、この人はハリー観にゆくんだろうなと思わせるファッションの人たち多数。会場内に長蛇の列ができているから、トイレか物販かと思ったら、列の先にあったのは喫煙ルームだったりするし。いまどき、あんなに喫煙者が多い集団も珍しかろう。

 なんにしろ、最近の宮本のライブは圧倒的に女性ばかりだし、ずとまよはもちろん若者中心なので、こういう年季の入ったロックファン大集合みたいなオーディエンス層って、かえって新鮮だった。

 いやぁ、でも本当にいいライブだった。ハリーのライブを観るのはこれが最初で最後になるかもと思っていたけれど、もしも彼らがふたたび一緒にツアーをする気になったら、そのときにはまた観にいきたくなってしまうこと必至だわ。

(Jul. 29, 2026)