南アフリカ1-1メキシコ
グループA/2010年6月11日(金)/ヨハネスブルグ(サッカー・シティ)/NHK


いよいよ4年に一度のサッカーの祭典が始まった。
僕にとっては4度目のワールドカップ。でも日本代表に対する期待値は過去最低。ジーコのときも低かったけれど、それでもアントラーズ・サポーターであるがゆえに、恩人の失敗は見たくない、なんとか結果を出してくれないかという、神頼み的な期待だけはあった。
でも今回はそういうのも皆無。現状の日本代表では、3連敗してあたり前。勝ち点1を上げられれば上出来。それどころか下手をしたら1ゴールもあげられずに終わるんじゃないかという不安さえある。
4年に一度の晴れ舞台をこんなひどい気分で迎えさせられたってだけで、僕はこの先二度と岡田武史という人を許せないだろうかって気になってしまっている。万が一決勝トーナメント進出を果たしたところで、おそらくこの悪感情は変わらないだろう。僕はいまだに北京オリンピックでの3連敗を根にもって、反町監督を許せないでいるけれど(執念深い)、岡田さんに対しては、戦う前からすでにそれと同じ反感で一杯になってしまっている。
なんにしろ、そんなわけで今回のW杯に関しては、最初から日本代表にはあまりこだわらずに、サッカーそのものを楽しむ大会だと割り切って観ることにしたい。ここでしっかりサッカーのワールド・スタンダードを見極めて、これからJリーグを応援してゆく上での
ということで、開幕戦となったホスト国、南アフリカとメキシコとの一戦。
南アフリカとは去年、日本代表が親善試合で対戦しているけれど、それほど強いチームだとは思わなかった(というか、どんなチームだかまるで覚えていなかった)。対するメキシコは小柄な選手ばかりながら、日本代表のお手本にしたくなるような華麗なパス・サッカーを展開して、毎回好印象を与えてくれる実力国。勝負の行方はおのずから明らかだろうと思っていた。これまでのW杯で初戦に負けたホスト国はひとつもないそうだけれど、今回はついにその記録が破れることになるだろうと。
……いやはや、浅はかでした。前半こそ予想通りの展開で、メキシコがゲームを支配していたので、そのうちゴールも決まるだろうと思っていたのだけれど、スコアレスのまま突入した後半、先制ゴールをあげたのはなんと南アフリカだった。カウンターからのロング・ボール一本で、左サイドを駆けあがった8番のチャバララ──この名前を聞いて 『ワンピース』 を思い出した人は僕の仲間です(小学生レベル)──が豪快なシュートを突き刺してみせた。あのスピードと破壊力はさすがにアフリカ勢。同じような形でカメルーンに突破を許して日本代表が失点する風景が目に浮かぶようなシーンだった。
これですっかり形勢が逆転した。8万を超えるキャパシティーを誇る巨大スタジアムの満員の観客のあと押しを受けた南アフリカは、先制した余裕も手伝って、それまでの劣勢が嘘のように、五分以上の戦いを演じてみせる。いっぽう追いかけるメキシコの攻撃は手詰まりの様相を呈しはじめる。こりゃもしや、南アフリカの勝ち点3かと思わせた。
ただ、さすがメキシコもそのままじゃ終わらない──というか、南アフリカにも最後まで守りきれるだけの集中力がない。残り10分強という時間帯になって、ふと気が抜けたような瞬間があって、メキシコに同点ゴールを許してしまう。
この場面では、左サイドのCKからの流れでメキシコの選手がアーリー・クロスを上げようとした瞬間に、南アフリカのゴール前にはメキシコの選手が4人もひしめきあっていた。おいおい、なんでそんなに固まってるんだよって感じだった。要するに南アフリカのマークはズレまくり、メキシコの枚数はあまりまくり。そこへきちんとボールが収まれば、ボールを受け取った選手はフリーでシュートを打つだけ。当然の帰結という印象の同点弾だった。
結局、試合はそのまま1-1で終了したけれど、お互いに最後まで足が止まらず、相手ゴールを脅かしつづける、なかなかおもしろい試合だった。今大会は南半球での開催のため、夏場に行われたこれまでの大会とちがって涼しいから、プレーの質が高くなるのではと言われていたけれど、なるほど。これからも熱戦がつづく予感たっぷりの開幕戦だった。
メキシコで印象的だったのは、(月並みだけれど)背番号18のドス・サントス。可愛い顔をして、俊敏性とパンチ力を兼ねそなえたいい選手だった。21歳と若い彼と並んで、37歳のベテラン、ブランコが控えているというのもいい。そういや決して守備的ではないのに、フィールド・プレーヤーのうち6~7人がDF登録ってのもすごかった(わけがわからない)。勝てはしなかったけれど、やはり今回もメキシコはおもしろいチームだった。
南アフリカではプレミア・リーグのエバートンでプレーする10番のピーナールという選手が注目を集めていたけれど、こちらはいまいちその力を出し切れていなかった。
同じグループAでは、このあとのウルグアイ-フランス戦もスコアレス・ドローに終わったため、4チームが勝ち点1でそろい踏み。南アフリカのがんばりとフランスの不調で、このグループはもっとも難しいグループのひとつって感じになっている。あれだけの人たちが応援しているのだから、南アフリカにはぜひとも決勝トーナメントに勝ち残って、大会をもっと盛りあげて欲しいところだけれど、残る対戦相手も難敵ぞろいだからなぁ。なんにしろ、このグループはこれから先の展開が楽しみだ。
会場となったサッカー・シティー・スタジアムは、8万人4千人以上を収容できるというその巨大さが圧巻だった。しかもただでかいだけでなく、ちゃんとサッカー専用というところが素晴らしい。やっぱW杯を開催する国は、ちゃんとああいうサッカー専用のスタジアムを作んないといけないでしょう。僕はこのスタジアムを観て、日本が22年のW杯招致に立候補しているのは、勇み足だと思った。サッカー専用のスタジアムがほとんどない国がなにをいわんやだ。
それにしてもブブゼラがうるせぇこと、この上なし。テレビで観ているだけでもうるさくてたまらないのに、現地ではあんなのが朝から晩まで鳴り響いていると思うと、ちょっとげんなりしてしまう。喜んであれを吹き鳴らしている南アフリカ人って、ある意味すごいかもしれない。
(Jun 12, 2010)