ロシア5-0サウジアラビア
グループA/2018年6月14日(木)/ルジニキ・スタジアム(モスクワ)/NHK総合


五十代に入って初のFIFAワールドカップ、ロシア大会が始まった。
ロシアはお隣の国だから、さほど時差がないだろうと思っていたら、さにあらず。さすがに広い国だからか──あと会場のほとんどがヨーロッパ寄りにあるせいか──第一試合のキックオフは日本時間で午後9時が標準。最後の試合は午前3時だったりする。
このところ衰えいちじるしくて、ほぼ毎日午前零時には寝てしまっている男にこれはきつい。いったいどれだけの試合が観れるんだか──でもってどれだけ文章が書けるのか──まったくもって心もとない。
でもまぁ、始まるとなったら放っちゃおけない。三十一のときに日本代表が初出場したフランス大会を初めて観てから今年でちょうど二十年目。通算六度目の大会。いつもどおり毒を食らわば皿までをモットーに、観られるだけの試合を観ようと思う。でもってできる範囲で文章を残します。おひまな人はおつきあいよろしく。
さて、そんなわけで今回の開幕戦のカードはホスト国ロシアとアジア最終周予選で日本に勝ってグループ2位で大会出場を決めたサウジアラビア。
もとよりヨーロッパのサッカーを観ない僕はロシアのことなどまったく知らないし、サウジには去年最終予選で戦っているのに(しかもに日本が負けているのに)どんなチームだったか、まったく記憶に残っていない。
要するに知っている選手はゼロの、ほとんど知らない国どうしの対戦。正直いってあまり魅力的とはいえない開幕戦だったけれど、でも始まってみれば、そこはそれ。だてに四半世紀もサッカーを観つづけちゃいない。ちゃんと楽しく観られる。やっぱ国どうしがプライドを賭けて戦う真剣勝負は、どんな国どうしでも、どんなアバウトな結果に終わろうとも、おもしろいもんだなと思いました。
聞けばロシアはホスト国としてポッド1に入っているくせして、FIFAランキングは70位で、グループ最下位だという。つまりサウジより下。それならば互角のいい勝負がみられるかと思ったら、とんでもなかった。7万人を超える大観衆の声援を受けたロシアが完勝してしまう。
序盤こそサウジのほうが勢いがあったので、ロシアはちょっとやばいんじゃないかと思ったのだけれど、まったくそんな心配は不要だった。開始わずか12分に、左サイドからのクロスに8番のガジンスキーという選手が頭であわせて、あっという間に先制。練習かってくらい高くてどんぴしゃのファイン・ゴールだった。
そうそう、試合が始まる前にロシアの選手たちをみて、でかい人ばかりだなぁと思ったんだ。まぁ、欧州ではあれくらいが普通なのかもしれないけれど、ふだんJリーグしか観ていない僕の目には巨漢の集まりに見えた。そんな高さが炸裂してのいきなりの先制点だ。やっぱアジアはフィジカルでは不利だよなぁって思った。
ロシアはそのあと前半のなかばに、9番の選手がドリブル中に突然足を痛めて交替してしまったので(可哀想に……)、これはちょっとサウジに風が吹いたかと思ったら、結果的にはその交替がさらにロシアに味方した。
かわりに出てきた6番のチェリシェフという選手(この人はあまり大きくない)が、前半の終わりにゴールを決めて追加点。右サイドからの崩しでファーに流れたボールを拾うと、サウジのバタバタした守備をおちついてかわし、豪快に決めてみせた。1点目もそうだけれど、ほんとサウジ、守備ひどすぎ。
チェリシェフは後半の終了間際にも、もう1点、技巧的なシュートを決めている(なので当然この試合のMOM)。それよりも前には、これまた後半途中から出てきた22番のジュバという選手(高さが売りの元エースらしい)が、ピッチに立ってわずか1分でヘディング・シュートを決めている。でもって、後半のロスタイムには17番のゴロビンという選手が直接FKまで決める始末。
ということで、ファイナル・スコアは5-0という一方的な試合になった。サウジは日韓大会でドイツに8-0という強烈なスコアで負けたことがあったけれど、あれにつぐ大敗じゃなかろうか。今回は相手がドイツのような強豪ではないだけに、なおさら哀れを誘う。中東の国は集中力が切れちゃうともろいよねぇ……。
まぁ、一方的な内容だったとはいえ、緒戦から5ゴールも観られて、ロシア人も大盛りあがりで、まあまあいい開幕戦だったような気がする(あくまでサウジ以外の人たちにとっては)。
それにしても、1点目が決まったあとにプーチンとサウジの国王らしき人がFIFAの会長をはさんで「いやぁ、ごめんね」みたいな感じで握手していたけれど、あの人たちって試合のあと、どんなことになってたんですかね。ちょっと気になる。
(Ju 15, 2018)