ラブソングができるまで
マーク・ローレンス監督/ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア/2007年/アメリカ/BS録画
この映画、ストーリーはとりたててどうということがないのだけれど、80年代の音楽シーンをパロディにしてみせたそのお手並や見事。オープニングからして、MTV最盛期のビデオクリップのパロディ仕立てになっていて、これが、本当にこんなヒット曲があったんじゃないかと錯覚しそうな出来になっている。まさにあのころのポップさとチープさとばかばかしさが画面から溢れて出ていて、観ていると気恥ずかしくてしょうがない。もう苦笑いするしかないという感じ。
ヒュー・グラントが演じる主人公は、80年代に人気を博したロック・グループのメンバーで、いまは落ちぶれて、ドサまわりで遊園地のステージに立ったりしている。彼のいたグループというのが、あきらかにワム!をモデルにしていて──ただしヒュー・グラントの役回りはジョージ・マイケルではなく、もう一人(アンドリュー?)のほう──、ヒュー・グラントは 『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ』 や 『ケアレス・ウィスパー』 の擬似兄弟みたいなナンバーを、腰をふりふり歌いまくってみせる。彼の、ちょっと恥ずかしいけれど、やるからには思い切りやろうと開きなおったような演技が笑いを誘う。また、彼に作曲を依頼してくるアイドル・シンガー(ヘイリー・ベネット)が、仏教かぶれのブリトニー・スピアーズとでもいったキャラクター設定なところも、なにげにおかしかった。
なんにしろ、音楽を通じて、80年代と現代の音楽シーンの空気をばっちりと捕らえてコメディにしてみせたところは上出来。ドリュー・バリモアも可愛いし、彼女とヒュー・グラントがデュエットする曲──作曲はファウンテインズ・オブ・ウェイン!──もめちゃくちゃいい。ただしヒロインのキャラは性格がややブレ気味で、ロマンティック・コメディとしては可もなく不可もなくといったところなのが、やや残念かなと。そういう作品。
(Sep 03, 2008)