2020年4月の映画

Index

  1. スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
  2. ブラック・クランズマン
  3. カンパニー・メン
  4. AKIRA

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

ジョン・ワッツ監督/トム・ホランド、デンゼイヤ/2019年/アメリカ/WOWOW録画

スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム (字幕版)

 『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』のその後の世界を舞台にしたトム・ホランド版スパイダーマンのシリーズ第二作。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から始まったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のフェーズ3はこれにて幕とのこと。
 この映画の印象は、ジェイク・ギレンホール演じる新キャラクター、ミステリオことクエンティン・ベックをあらかじめ知っているかどうかでずいぶん変わると思う。知らないで観ていた僕にとって中盤のどんでん返しは意表をついていたけれど、もともとマーベルのキャラとしてミステリオを知っている人にとっては、あの展開はどんでん返しでもなんでもないんだろうから。
 今回の作品は、そんな新キャラを絡めつつ、アベンジャーズが空中分解した世界で、残されたスーパーヒーローとしての責任を担わざるを得なくなったピーター・パーカーの悩みを、MJ(デンゼイヤ)との恋模様をもうひとつの軸としながら、修学旅行で訪れたヨーロッパ各地を舞台に描いてゆくというもの。
 ヴェネツィア→プラハ→ベルリン→オランダ→ロンドンとEUを横断して舞台を変えてゆくこともあり、この作品は全編にわたってバケーション感たっぷり。ピーターとMJの関係だけではなく、ピーターの親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)に彼女ができることもあり、ロマンティック・コメディ度も高いし、ハッピーはともかくニック・フューリーやマリア・ヒルまですっかりコミック・リリーフっぽくなっちゃっているし、全体的に能天気でゆるい作風。
 MCUフェーズ3のとりを飾るにはゆるすぎじゃん?――と思ったのだけれど、そういやフェーズ2の最後は『アントマン』だった。最後はあえてゆるく締めるのがマーベルの流儀なのかもしれない。
 ということで、そこそこおもしろかったけれど、出来はそれほどでもないかと思っていたら、ラストに思わぬ小爆弾が仕掛けてあった。
 えっ、そんな終わり方ってあり?――って思いました。
 ほんとマーベルは罪作りだ。
(Apr. 10, 2020)

ブラック・クランズマン

スパイク・リー監督/ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー/2018年/アメリカ/Amazon Prime Video

ブラック・クランズマン (字幕版)

 アカデミー賞で最優秀脚色賞に輝いたスパイク・リーひさびさのヒット作は実話ベースのクライム・コメディ。
 コロラドスプリングス初の黒人警官となった主人公のロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)がいたずら半分でKKK(クー・クラックス・クラン)に電話で接触したところ、相手が自分を白人と勘違いして加入を進めてきたことから、同僚のフィリップ(『スター・ウォーズ』最新作でカイロ・レンを演じたアダム・ドライバー)を代役にたてて潜入捜査を行うことになる。
 白人至上主義のKKKに黒人が(名義だけにしても)加入を認められたのみならず、組織のボスであるデヴィッド・デューク(実在の人物を演じているのは『ヴェノム』で主役をはっているというトファー・グレイス)と電話で親密になってしまうという展開が、緊張感ありつつもコミカルで素晴らしい。クライマックスの悲喜劇もこれぞスパイク・リーって感じだし、アカデミー賞受賞も納得の出来映えだった。
 ただし、全編にわたって真正面からレイシズムを取り上げているせいで、楽しいっていって済ませられない映画でもある。娯楽性と政治性を両立させているところも高評価の理由なんだろうけど、おかげでかなり苦い後味が残る作品だった。そのため単純に好きというのがややためらわれるのが残念なところ。
 キャスティングで驚いたのが、主人公の恋人になる黒人女性役のローラ・ハリアーという女優さんが『スパイダーマン:ホームカミング』でピーター・パーカーの憧れの女の子リズを演じていた人だということ。カーリーヘアのインパクトが強すぎて、まったく気がつきませんでした。
(Apr. 12, 2020)

カンパニー・メン

ジョン・ウェルズ監督/ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、トミー・リー・ジョーンズ/2011年/アメリカ/Amazon Prime Video

カンパニー・メン (字幕版)

 ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、トミー・リー・ジョーンズというオスカー受賞者・四人の競演が売りらしいリストラ映画。
 造船業からスタートして全米有数の大企業へと発展したGTXという会社が世界金融危機による業績不振でベン・アフレック演じるセールス部長を解雇。さらには管理職のクリス・クーパー、副社長のトミー・リー・ジョーンズら重役らも次々と首を切られてゆく(ケヴィン・コスナーだけはその企業と関係がないベン・アフレックの義兄の大工さん)。
 それぞれに優秀な人材なのだろうけれど、金融恐慌の真っ只中かつ、もとより大金を稼いでいた人たちだから、プライドと欲が邪魔をして再就職が決まらない。それぞれ無職が長くつづくにつれ、ローンやらなにやらに追い詰められてゆき……。
 ――って、そこから負け犬たちの巻き返しが始まるのを期待して観ていたら、そうはならないのが拍子抜け。最後はそれなりにポジティブな感触を残して終わっているけれど、そこまでに延々と見せつけられてきた主人公らの懊悩を癒すほどのカタルシスはないのがこの映画の弱点だと思う。
 まあ、そこがリアルといえばリアルかもしれないけれど、でもリアルな失業ドラマを描くんならば、もっとシリアスでいい。この映画はそこんところが中途半端でどっちつかず。地の塩的な役どころのケヴィン・コスナー絡みの部分には適度に心温まるエピソードもあるけれど、やはりそれだけではものたりない。願わくばクライマックスにはもうちょっと痛快感が欲しかった。
 でもまあ、よくも悪くも仕事ってやっぱり大切だよねとしみじみ思わせる作品。
(Apr. 12, 2020)

AKIRA

大友克洋・監督/岩田光央、小山茉美/1988年/Netflix

AKIRA 4Kリマスターセット (4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc) (特装限定版)

 コロナ禍での自粛期間中に『AKIRA』の原作を一気に流し読みしたので、あわせて映画版も観なおしてみた(じつに十六年ぶり)。
 前回この映画について書いたときには、原作のマンガが好きすぎて、愚痴ばかりになってしまったけれど、あらためて公開から三十年以上がたった今になってニュートラルな視線で観直してみると、いや、この映画版が世界的に高い評価を受けるのもよくわかる。
 そりゃマンガ版と比べてしまえば、ストーリーの三分の二がはしょられてしまっている分、不利は否めないし、舞台となるのは2019年(つまり去年)なのに、テレビがワイドじゃなかったり、CDのジュークボックスがあったりと、想像力が時代に追い越されてしまっている部分もある。でも、その上でなお映像は三十年前のものとしては驚異的にていねいで綺麗だし、アクションもビビッドで素晴らしかった。二時間ちょいにこれだけの内容を盛り込んだ濃厚さもすごい。
 あと、細かいところでは、主人公の金田の服装がシチュエーションごとにちゃんと違っているところがグー。
 アニメって作画の手間からキャラがずっと同じ服装をしていることが多いけれど、この映画の金田はバイクに乗っているときは赤のライダースーツ、学校ではピンクのポロシャツ、清掃業者に化けた際にはオレンジのつなぎと、シチュエーションにあわせて様々な服を描き分けている。女の子を魅力的に見せたいからヒロインのファッションに凝るのならばともかく、男性の服装にここまでこだわりを見せているアニメって珍しいんじゃないかと思った。
 この服装について特にぐっと来たのが最後の鉄男との対決シーン。ここは当然トレードマークの赤のライダースーツ姿でビシッと決めていてしかるべきところかと思いきや、上は無地のTシャツ姿。なぜだろうと不思議に思ったら、そのあとのケイとの再会シーンでケイが金田のジャケットを羽織っているのを見て、おー!と思った。
 些細なところだけれど、こういう繊細な配慮って大好きです。大友先生天才!
 あと音楽もよかった。パーカッシブで無国籍な電子音楽――でもよく聴くと「カネダ~」とか「テツオ~」とかいっててびっくり――で、音楽自体がとくに好きってことはないんだけれど、昨今はJ-POSタイアップのコマーシャリズム全開な音楽の使い方に慣れきってしまっているので、商売っけ抜きで純粋に斬新な映画音楽を届けようという作り手の意欲がびしばし伝わってきてよかった。
 あと、前回の感想では「原作のユーモアがすっぽりと抜け落ちてしまっている」みたいなことを書いているけれど、あらためて観なおしてみたら、ユーモラスなシーンがまったくないわけでもなかった。あくまで金田の登場シーン限定って印象ではあったけれど、それでも僕が思っていたよりは笑いの要素はあった(なぜ前回はまったく印象に残っていないんだろう?)。そこんところも好印象に転じた要因のひとつ。
 まぁ、金田役と子供たちの声優がしっくりこないのはあいかわらずだし、映画オリジナルのアキラ初登場のシーンの残酷さや、マンガ版とまったく違う哀れな役どころを与えられたミヤコ様など、映画版にはやはり個人的には好きになれないところがけっこうあるんだけれど、それらを踏まえてなお、映画自体の出来のよさにはとても感心した。
 いまさらながら、まちがいなく日本が世界に誇れるアニメ映画のうちのひとつだと思います。
(Apr. 18, 2020)

2004年に書いた『ARKIRA』の感想はこちら