『男はつらいよ』@BS2特集(2)

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Index

  1. 男はつらいよ・純情篇
  2. 男はつらいよ 奮闘篇
  3. 男はつらいよ 寅次郎恋歌
  4. 男はつらいよ 柴又慕情
  5. 男はつらいよ 寅次郎夢枕

男はつらいよ・純情篇

山田洋次監督/渥美清、若尾文子/1971年

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 宮本信子と森繁久彌(二人とも若い!)親子の再会という豪華な配役のエピソードを前ふりにして、またまたとらやに下宿することになった美女に寅さんが振られるという話。
 今回は売れない作家を夫に持つ家出妻が相手だ。これはちょっと寅さんには荷が重い。独身女性でさえ手に負えない寅さんの手に負えるはずがない。
 それでもその人──夕子さんでしたっけ──が寅の気持ちを受け止められないことを申し訳なく思い、きちんと話をつけようとする、という展開はいい。今までの女性は寅の気持ちに気づいてか、気づかないでか知らないけれど、しらばっくれているようなのばっかりだったから、こういう人の方が好感が持てる。彼女の遠回しなほのめかしに対して、寅次郎は相手が話しているのが自分のことだと気がつかない、という困った展開もこのシリーズならではだ。とても上手いと思った。
 ま、寅さんが恋わずらいで寝込んでしまうという展開はいかがかなものかとは思うけれど。
(Aug 18, 2005)

男はつらいよ 奮闘篇

山田洋次監督/渥美清、榊原るみ/1971年

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 今回の主たるエピソードは寅の母親ミヤコ蝶々さんの上京と、知的障害者のマドンナ花子(榊原)との失恋話。
 とらやの面々が、蝶々さんに寅の結婚について問われて、これまでの失恋遍歴を数え上げるシーンがおかしい。これから先、何度も繰り返されることになる笑いのネタの、記念すべき第一回目というところなんだろう。
 あと第一作のマドンナ、光本幸子が赤ん坊を抱いて再登場。すっかり落ち着いた奥様然としていて、僕には縁遠い雰囲気になっちゃっていた。
 あ、ちなみにこれも録画に失敗。ルミの故郷を訪ねたさくらが、帰りのバスの中で偶然、寅と出くわしたところまでしか録画されていなかった(残りは数十秒?)。ああっ。
(Aug 21, 2005)

男はつらいよ 寅次郎恋歌

山田洋次監督/渥美清、池内淳子/1971年

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 博のお母さんの葬儀に闖入した寅さんがそのまま博の実家に居候。博の父親(志村喬)から聞かされた平凡な生活の幸せさにまつわる話に感化されたのち、柴又に帰ってきて喫茶店を開いたばかりの後家さんに恋をする、という話。
 今回のポイントは寅さんが失恋らしい失恋をせずに旅に出てゆくことだ。池内淳子演じる喫茶店のママさんは、気ままな旅暮らしを続ける寅に対して「うらやましいわ」を連発する。そんな会話の中で、彼女と自分の間のギャップに気づかされたとでも言うように、寅さんはその直後、さくらに「またふられちゃったよ」と言い残して旅に出てゆく。これまでは必ず相手に恋人がいたりしていたけれど、今回は違う。寅には張り合うべきライバルはいないし、相手もあいかわらず自分に好意的だ。それなのに唐突に自ら身を引いてしまう寅さんの姿には、このシリーズの根幹にある男の美学が見てとれる。『男はつらいよ』を語る上でもっとも重要な作品のひとつなんじゃないだろうか。
 おいちゃん役の森川信さんはこの映画の公開後に他界されたとのことだ。この人の「ばっかだなあ」という名セリフがもう聞けないことをとても残念に思う。
(Sep 23, 2005)

男はつらいよ 柴又慕情

山田洋次監督/渥美清、吉永小百合/1972年

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 さくら夫婦の一戸建て建築資金の足しにしようと、おいちゃん夫婦はとらやの店先に「貸間あり」の札をつるす。で、帰宅早々これを見た寅は怒って店を飛び出し、新しい住まいを見つけようとひとりで不動産屋巡り。足を棒にして歩き回った挙げ句、最後に案内された先はとらやでした、というのが最初のエピソード。
 その後、寅は旅先で知り合って仲良くなった女の子三人組と柴又で再会。三人娘の中でも一番の美女、歌子(吉永)に慕われて、またひと騒動が巻き起こる。
 二代目おいちゃん役として松村達雄さんが登場、違和感のないおいちゃんぶりを見せている。舎弟のノボルもひさしぶりに登場──この人は堅気になったり、テキヤに戻ったり、いつまであの調子なんだろう。あと、冒頭の夢のシーケンスが恒例となるのはこの作品からだ。いいんだか、悪いんだか。
 それにしても年頃の若い女の子三人が、寅と同じ旅館のとなりの部屋で枕を並べて寝ているというシチュエーションには時代性を感じた。若い女性たちがいまどき、あの手の旅館に泊まるなんて思えない。でもそういう時代もあったんだろうなと思うと、それはそれで新鮮な感覚だったりする。
(Sep 23, 2005)

男はつらいよ 寅次郎夢枕

山田洋次監督/渥美清、八千草薫/1972年

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 また寅が堅気になって所帯を持つと言い出して、とらやの人たちが見合い相手を探し始めるのだけれど、寅を知っている柴又の人は総スカン、というのがエピソード1。マドンナは八千草薫演じる寅の幼なじみのバツいち美容師。とらやに下宿することになった大学教授(米倉斉加年)がこの人に一目惚れ。自分も彼女に気がある寅さんだったけれど、それじゃ仕方ないと恋のキューピッド役を買って出る。ところがいつもどおりの回りくどい態度が原因で思わぬ展開に……。
 池内淳子さんがマドンナの話やこれを見ると、結局寅さんは結婚できないんじゃなくて、あえてしないんだというのがわかる。自らを知っているというのか……。おのれを知る、知るがゆえに幸せに背を向ける。そんな風な、欲に流されないストイックさがある。寅次郎は駄目な人だけれど、そういうところはとても自分をわきまえていて立派だ。だからこそ、あれだけ出鱈目をやっていても憎めなくて、「馬鹿だなあ」と苦笑しつつ、多くの人が受け入れているのかもしれない。
 あと、僕は昔からあまり冒頭の夢のコーナーは好きではないのだけれど、この回のそれはなかなかよかった。明治・大正・昭和初期(どの時代設定なんだかわからない)のカフェーを舞台に、女給として働くさくらが、嫌な客──何話か前に旅劇団の座長役で登場した人で、このコーナーのレギュラーらしい──に言い寄られているところに書生姿のひろしが登場、返り討ちにあってこてんぱんにやられてしまう。そこへ颯爽とあらわれるのが船長姿の寅さん。その人の通り名が「マカオの寅」。わはは、おもわず笑ってしまった。
(Oct 08, 2005)