男はつらいよ 寅次郎忘れな草
山田洋次監督/渥美清、浅丘ルリ子/1973年/BS2録画
父親の法事の日に帰ってきた寅が、おいちゃんが死んだものと思って騒ぎ出すというオープニング。ピアノが欲しいと憂うさくらにおもちゃのピアノを買ってやって得意げな寅と、そのボケに困るとらやの面々。最初からとてもテンションが高い。
自分の的外れに気づいてさっさと家を飛び出した寅は、北海道・網走で行商をやっていてリリーと知り合う。でもって彼女との会話──「あたしたちの人生なんてあぶくみたいなもんだよね」──に感じ入って、堅気になるべく牧場で働き始めてみたはいいけれど、当然のごとく三日坊主でダウンする羽目に……。わざわざ北海道まで迎えにゆくさくらに連れられ、柴又に戻った寅は、そこで偶然リリーと再会することになる。
印象に残るエピソード満載、内容の濃さはこれまでで一番だろう。間違いなくシリーズを代表する一本だ。
本人のいうとおり、かなり化粧は濃すぎるけれど、それでも浅丘ルリ子はとても綺麗だと思うし、なにより現代的なそのフランクさがとても魅力的だ。彼女がクラブで歌う『港の見える丘』という歌もとてもいい。ちゃんとした音で聴きたいと思ってiTunes Music Storeを検索してみたくらい──だけれどカタログに入ってなくて残念でした、で終わってしまった。僕個人の趣味からすると、いまのところiTMSは品揃えに問題があり過ぎて使えない。
あと、寅が騒動を起こしたあとで、ひろしに「地平線がまっすぐに見えるような広いところへ行ってみたい」と、しみじみと云わせておいて、その後、そんな真面目なひろしが夢に見る地そのものという北海道で、寅がのんびり過ごしていたり、その寅が問題を起こしたために、さくらもそこへ行くことになる(でも全然楽しめなくてちょっと可哀想)というシニカルな話の持っていき方もうまいと思う。
(Oct 08, 2005)