男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
山田洋次監督/渥美清、木の実ナナ/1978年
『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』が公開され、ピンクレディーの『UFO』がヒットした頃の作品ということで、冒頭の夢のシーンは宇宙人もの。寅さんが実は宇宙人で、彼を迎えに宇宙人がUFOでやってきたというかぐや姫のパロディだ。迎えにくるエイリアンが『猿の惑星』の猿とゲンちゃんというギャグがかなり恥かしい。
マドンナはさくらの同級生だった松竹歌劇団のダンサー、奈々子(木の実ナナ)。この人にはすでに結婚を申し込まれている恋人がいるので、寅さんの恋もあまり深入りしないであっさりと終わる。
ちなみに奈々子の恋人と言うのが『太陽にほえろ』のゴリさんこと、竜雷太。彼が雨のなか、恋人のアパートの窓を見上げているシーンを見て、「あ、ゴリさんが張り込みしている」と思わない日本人は、おそらくいないのではないかと思う──少なくても僕らと同世代以上ならば。
あと、寅さんが熊本で知り合う青年、留吉(米吉だと思っていた)役が武田鉄矢。前作の中村雅俊に続いて、寅さんが恋愛道の師匠に近い役をつとめることになる。とはいってもこの人、『男はつらいよ』における寅次郎的失恋の美学はぜんぜん持ち合わせていない。意外とこういう人の方が最終的にはしあわせになれてしまうんだろうなと思わせる、寅さんのゆがんだデリカシーとは無縁のキャラだ。
(May 28, 2006)