『男はつらいよ』@BS2特集(4)

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Index

  1. 男はつらいよ 葛飾立志篇
  2. 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
  3. 男はつらいよ 寅次郎純情詩集
  4. 男はつらいよ 寅次郎と殿様
  5. 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!

男はつらいよ 葛飾立志篇

山田洋次監督/渥美清、樫山文枝/1975年

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 寅さんが昔惚れた女性の娘役で桜田淳子が登場、寅さんの隠し子かと思わせて、とらやの面々をドッキリさせる。その後、この娘の母親の墓参りに出向いた寅は、寺の住職に学問の大切さを説かれ、いつものように簡単に感化されて帰京。するとたまたまとらやに御前様の親戚の考古学研究生、筧礼子(樫山文枝)が住み込んでいたから、さあ大変。まわりの心配をよそに、彼女から歴史の講義を受け始めることになる。
 とらやに親戚の女性を預けに来ておいて、寅の存在を失念している御前様のうっかりぶりはどうかと思う。どこの世界に寅の存在を忘れて、とらやに女性を預けるおっちょこちょいがいるってんだろう。「こまったー」じゃねえだろうよと。寅さんじゃなくてもそう言いたくなるってものだ。
 この話は以前に見た時の印象がそれなりに残っていたのだけれど、僕は大学教授の田所先生(小林桂樹)が振られることになるという部分をすっかり忘れていて、二人はくっついちゃうものだとばかり思っていた。なにを見ていたんだろうか……。
(Nov 06, 2005)

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

山田洋次監督/渥美清、大地喜和子/1976年

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 満男が小学校に入学。その初日に担当の先生が「あら、あなた寅さんの甥御さんね」と言ったらば、生徒と父兄の間で爆笑が起こったそうで……。帰ってきたばかりの寅は、さくらのその話に腹を立てて、家を飛び出す──そりゃ怒っても当然だ。
 その晩、彼が一人で飲んでいた飲み屋で偶然知り合ったのが日本画家の大家、池ノ内青観(宇野重吉)。そんな偉い人だとは知らない寅は、彼をとらやへと連れ帰って、またもやひと騒ぎ。その後、兵庫県龍野──つい先月、隣町と合併して「たつの市」となったとのこと──でこの先生と再会した寅さん。そこで彼のご相伴に預かり、市役所の接待を受けて豪遊することに……。その席で芸者のぼたん(大地)と意気投合、「いずれ所帯を持とうな」とふざけあう仲となる。このぼたんが詐欺師に騙されて巻き上げられた二百万円を取り戻そうと上京してきて、またひと騒動ということに……。
 マドンナが水商売の人だと、寅さんはまったく結婚とか意識しないというのはお約束のようなものだから。恋愛面ではいままでにないあっけらかんとしたエピソードだった。でもその分、マドンナを苦しめる純然たる悪人が登場したりして、ほのぼのとしてばかりはいられない話でもある。とりあえず大地喜和子は意外と好きなタイプだった。
(Nov 06, 2005)

男はつらいよ 寅次郎純情詩集

山田洋次監督/渥美清、京マチ子/1976年

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 恒例の夢のシーンは日本語字幕つきのフランス語。そんな遊び心を見せて始まるこのエピソードだけれど、まずは満男の担当の先生(檀ふみ)が家庭訪問のためにとらやにやってくるというのが間違っている。家庭訪問なんだからさ、ちゃんと自分のうちに来てもらわないと。おいちゃんちに美人の先生を呼んでおいて、でもってそこへ寅さんが帰ってきて、あら大変って、そりゃあ博とさくらの危機管理がたりないってものだ。怒っちゃいけないよ、博さん。自業自得だから。
 そんなこんなで喧嘩になっていつものように飛び出した寅次郎は、その後、旅先でお馴染みの劇団一座と再会する。車先生なんて言われて、ちやほやされていい気になった寅さん、金もないのにおごりで宴会を開いた挙げ句、無銭飲食で捕まってしまう。ところが警察に呼び出されたさくらが心配顔で迎えに来て見ると、寅は地元の警察署の人々意気投合して、警察署をホテル替わりにして、くつろぎまくっているから困ったものだ。
 葛飾に戻った寅にさくらが「満男の先生はおにいちゃんとは親子ほど年が離れているのよ。あの人のお母さんが相手ならばおかしくないけれど」などと言っていると、そこに話題の先生が、母親役の京マチ子を連れて登場する。子供の頃、この人に憧れていた寅さん、さくらのお墨付きを得たこともあって、すっかり有頂天。源公を引き連れて、彼女の屋敷に日参を始める。ところがこの人が不治の病を患っていて……。
 以下は説明不要だろう。うーん、それにしても数年前の作品で今の僕と同い年だった寅さんが、もう檀ふみよりも京マチ子が年齢的にふさわしいと言われちゃっている状況ってのは……。ちょっぴり複雑な気分にさせられた。
(Dec 18, 2005)

男はつらいよ 寅次郎と殿様

山田洋次監督/渥美清、真野響子/1977年

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 鞍馬天狗で有名な嵐寛寿郎を伊予大洲の殿様役として配した第十九作。威張っていながら、それでいて腰が低いという、アラカン翁の不思議な殿様ぶりがとても印象的だ。なまじ真面目そうだから、ヤクザな寅さんとの対比がとても楽しい。
 ただし殿様の存在感が大き過ぎる分、マドンナ鞠子役の真野響子は、割を食ってしまった感がある。寅さんとの絡みも少ないし、失恋にいたるまでの展開も随分おざなりだ。マドンナはいて当然、お約束だから登場しました、みたいな感じで、ちょっと可哀想かなと思った。
 アラカン翁へのオマージュということで、オープニングの夢の場面も鞍馬天狗のパロディとなっている。寅が満男へのお土産に小さな鯉のぼりを買って帰ったことで騒ぎとなる展開は、以前ピアノでやったのと同じパターンの繰り返し。アラカンさんのキャラクターを除くと、新鮮味はほとんどないエピソードだった。
 とかいいつつも、寅さんとアラカンさんの絡みがなかなか楽しいので、けっこう好きな作品だったりする。
(Jan 23, 2006)

男はつらいよ 寅次郎頑張れ!

山田洋次監督/渥美清、藤村志保/1977年

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 中村雅俊、大竹しのぶの純情カップルに、寅さんが恋の手ほどきをするという話。
 マドンナの藤村志保は中村雅俊演じるワット君──電気技師だからとこんなニックネームをつけてしまうところに時代性が滲み出している──のお姉さん役で、ワットが大竹しのぶに振られたと思い込んで田舎へ帰ったあと、彼を心配して故郷を訪ねた寅と出会うことになる。ということで登場するのは物語の半分が過ぎてからだし、前作に引き続き、マドンナの存在はおまけという印象がある。メインとなるのは、見ているこちらが赤面してしまいそうになるほど純情な、若い二人の恋愛劇だ。そういう意味では、この作品は、満男がメインとなるシリーズ終盤の諸作の原型と言えるのではないかと思う。
 しかし最初のデートでいきなり結婚に話が及んじゃうというのは、この時代ではあたり前だったんだろうか? このシリーズはそういうところが現代人の感覚からずれすぎていて、ギャグなのかマジなのかわからないところが困りものだ。
 ギャグといえば、この映画には、失恋したと思い込んで絶望した中村雅俊がとらやの二階で自殺をはかって、ガス爆発を起こしてしまうというむちゃくちゃ派手な場面がある。二階の窓がふっとぶような爆発を起こしておいて、当事者が顔を煤で真っ黒にしただけって……。この手のシリーズにああいうギャグって反則じゃないだろうか? とか言いつつ、意表をつかれて爆笑してしまったけれども。
(Jan 23, 2006)